第28話 友達ゲットだぜ!
リュリーナ嬢との再会から一ヶ月も経つ頃には彼女の友人達とも話すようになった。
幼い頃から淑女教育の一環として年の近い子供たちとのお茶会もあったが、やはり学校での友人というのは別格だ。
ちなみに、お茶会で友人は一人もできなかった。
「そういえば、城下に新しいカフェが出来たのよ」
「そうなの?」
「何でも東の方の国のお茶やお菓子を出すお店なのですって」
「へぇ〜、東の方というとジパングかしら?」
「そう!何でも教皇様が直々にジパングの商人と面会されてその時に同席されていた聖女様がお気に召したそうよ」
「ごふっ」
「あら、大丈夫?」
「え、ええ。ところで、その聖女様というのは…」
「あら、最近噂になってるのよ?教会に聖女様が現れた…って」
「私も聞いたわ。何でも数年前から教皇様が密かに育ててらしたって噂よ」
「へ、へぇ…そうなんだ…」
突然の話題に思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。その『聖女』俺のことだね。
そう、あれは一週間ほど前の話。
珍しく教皇から呼び出された俺は、教会に訪れていたジパングの商人から懐かしい食材をいくつか購入した。あの時は教皇が用意した服とベールを被って若干抑えられないテンションのままだった気はするが、何故か『聖女』扱いになっていたのだ。
出処はあの商人だと思うが、何で聖女だなんて言われたんだろうか?
「このお茶も聖女様が購入されたそうよ」
そう言って出されたのは緑茶だ。
「まぁ、キレイな緑色」
「香りも良いわ!」
「よく手に入ったわね?」
「ウチの商会はジパングに伝手があるのよ。以前はあまり注目されていなかったのだけど聖女様がご購入されたって噂が出回ってから飛ぶように売れてて大忙しだわ」
「へ、へぇ〜」
リュリーナ嬢が連れてきたお友達は三人。明るめの茶髪にブラウンの瞳のアンナと、水色のストレートヘアに濃い青の瞳のソフィアは男爵令嬢。オレンジの髪に緑の瞳のエリィは王都でも屈指の大商会の娘だ。
普段はこの四人組で行動していて、昼食時に俺が加わるのが最近のルーティンになっている。俺はクラスが違うからね。
選択授業がある日はそのままリュリーナ嬢と厩舎へ向かって馬の世話をし、授業に出席する。リュリーナ嬢は自宅へ帰るので授業が終わればそこでお別れだ。
厩舎は馬場と共に学院内の端のほうにある。
つまり、すごく遠い。
何せ敷地内に森があるんだもん。乗馬に慣れてきたら森の中も馬で入れるようになるらしいので今から楽しみだ。
王都にこれほど広大な敷地を確保するのは大変だろうと思ったが、外観はそこまで広く見えないんだよな。貴族の子供が大勢通うので王宮と同等のセキュリティ対策がされているはず。もしかしたら空間拡張の魔法でも使われているのかもしれないな。
面白そうだし、今度解析でもしてみよう。
俺の能力はゲームとほぼ同じだけど、この世界については知らないことも多い。きっと、俺の知らない技術なんかもあるはずだ。
そんな事を考えながら、学舎へ向かう道を歩く。厩舎と学舎の間には森があり移動する生徒のために遊歩道が整備されている。
そこから少し外れると、鬱蒼とした森の中へと迷い込んでしまうから気を付けるようにと初日に説明があったな。『神眼』を使って歩道と森の境目をみると確かに何かしらの術が使われているのがわかった。
「なるほど、術が重ね掛けしてあるのか」
一見すると複雑で絡み合った文様なのだが、複数の術式が重なり合ってすぐに解析出来ないようにしてあるようだった。まぁ、俺は視れちゃうんだけどね。
それにしても、なんかこの部分だけ他と違う術式が書き加えられているな?何だろうこれ…
「どうだい?素晴らしい術式だろう!」
「ひゃっ?!」
目を凝らして術式を眺めていると、後ろから突然大きな声で話しかけられた。思わず声が出ちゃったよ。
声の主は眼鏡を掛けた上級生で、何やらイイ笑顔で仁王立ちしている。ローブの色は白で、胸元のクラス章は『
…あ、嫌な予感。
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