第18話 憧れの寮生活
「改めまして、ウォルティス王立学院へようこそ」
『
早くベッドでゴロゴロしながらお菓子が食べたいぞ!自宅だと侍女がいるからやれなかったんだよねー。
講堂へ向かう前に髪色を変えて眼鏡を掛けておく。教室では常に視線を感じて居心地が悪かったが、人の視線から解放されるだけでこんなにも気分が良いとは…。目立つなんて俺には向いてないな。
「入寮生だね?この冊子を持って適当な席に付いてくれ」
「はい、ありがとうございます」
講堂の入り口で冊子を受け取り、後ろの方の席へ座る。日本人の哀しい習性というか何というか…こういう時って後ろとか端に座りたくなっちゃうよね。この世界では前に座るのが良いって云われているので、地位やプライド高めな人は前に座りたがるのだ。
お陰で後ろの席は空いていて居心地が良かった。こうして見ると、意外と寮生活をする生徒は多いんだな。
そう思いながら周囲を見渡していると、何やらキラキラした頭が見えた。あれはもしや…
「見て、ジョシュア様よ」
「お隣はエルドナーシュ様と…」
「ねぇ、聞いた?王子殿下も寮に入られるらしいわよ」
「そうなの?!お近づきになれるかしら…」
「護衛の方もいらっしゃるし、私達のような下級貴族には見向きもされないわよ」
oh…
兄達の存在忘れてたー!!!!
兄達は高等部だから顔をあわせる機会は殆どない筈だが、絶対俺の事探すよねぇぇ?!
あーっ!二人共キョロキョロしてるぅぅぅー!!!銀髪なんて珍しい髪色すぐに見つけられる筈だもんねぇぇぇー!!!殿下も気にし始めちゃったじゃないのーー!!!
まぁ、今は存在が希薄になってるし姿も変えてるから見つからない筈だ。…筈だよね?
何で王子殿下はコッチ見てるのかな?気の所為だよね??
寮についての説明や寮監と寮長の紹介を終えて、それぞれの寮へと移動した。
寮は学院に併設されているのだが、学院自体がすごく広いんだよね。寮の近くには職員宿舎もあって、セキュリティも抜群だ。
建物はL字で、鏡に写したかのように二棟が向かい合わせで建っている男子寮と女子寮だ。
寮では一人一部屋与えられていて、中は寝室と居間に分かれていた。貴族が使うならこれでも狭いのだが、前世の感覚が残る俺にはとても広く感じる。居間だけでも俺が住んでたアパートより広いんじゃないかな?
ちなみに、風呂とトイレも完備してある。どちらも前世と変わらないので安心だ。異世界のトイレと風呂事情って、大抵中世くらいの水準だったからね。
部屋に置いてある家具は、すべて家から持ってきた物だ。もちろん寮に初めから置いてある家具でも良いのだが、これでも一応貴族なので家具は新品を購入して設置してある。
後にDIYで手を加えるつもりなので、どの家具もすごくシンプルなものだ。侍女達には「お嬢様のお部屋に相応しくありません!」と言われたが「いずれ自分好みに作り変えたいから」と押し切った。
拘ったのは寝具とソファ。寝心地・座り心地の良いものを厳選して持ち込んである。後は生活している間にアレコレ整えるつもりなので、今からどんな風にしようかと楽しみで仕方がない。
家具や荷物のチェックを済ませると夕食の時間になった。
食事は自炊や外食でもいいし、食堂があるからそこで食べても良い。高位貴族は特別室と呼ばれる場所を借り切ってそこで食事をとるようだ。俺はもちろん食堂派。街に出て買い食いもしてみたいな。
この世界の食事はパンとスープが基本形で、そこに昼ならフルーツが、夕食なら前菜とメインディッシュが付く。「異世界あるある」だが、日本食が恋しいぜ…
気候や文化が地球と似ているなら、日本食も探せばあるんだろうか?無くても素材さえあれば再現出来るんだよな…あれ?もしかして魔法で再現出来るんじゃないかな。
よーし、当面の目標は日本料理の再現で決まりだな!
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