第16話 モブ令嬢に俺は…なる!
「アシェラッド・セラティア・フォーサイス。ウォルティス王立学院初等科『
「やっぱり、やらかしてたぁぁぁぁぁ!!!」
入学試験から一ヶ月ほどが経った頃、学院から入学案内が送られてきた。案内の中には俺が所属するクラスの名前が書かれていたんだが…
「アシェラッドはルーノか。凄いじゃないか!」
「あはは…運が良かっただけですよ…」
王立学院のクラスにはランクがある。一番上から『
俺が狙ってたのは『
「いや、無理ですな」
「なんでぇぇ?!」
今日は教皇の授業の日。お茶を飲みながら王立学院からの通知内容を教皇に愚痴っている最中だ。
「王家をはじめ、守護伯の血筋を持つ娘を欲しがる貴族は多いですからの」
「えぇ〜、やっぱそういう感じぃ?」
「現王家の王子達はセラティア様と年頃も近いですし…従姉君はすでに他国へ嫁入りなされてますからな」
守護伯には二人の息子がいる。父とその弟ジョージ。ジョージ叔父さんは、農業が大好きな農業学者で祖父の領地で補佐官として働いている。叔父には3人の子が居て一番上のマリーニャが他国へと嫁いでいるのだ。
「そういう面倒なのは嫌なんだけどなぁ…」
「こればかりは仕方ありません」
まぁ、生まれについては仕方ないよな。だったら出来ることをするまでだ。
「ふむ、見た目を変化させる魔道具ですか」
「ピアスにしておけばいざって時に便利でしょ?」
学院では目立ちたくないのだが、どうしても容姿のせいで目立ってしまう。なら、目立たない容姿に変えてしまえば良いと思うんだよね。
髪を目立ちにくい茶色に染めて、瞳の色はコンタクトで隠す。あとはメイクと認識阻害効果のある眼鏡をかければ…
「ほぉ、これは全くわかりませんな!」
変身の魔道具には、素の姿を登録してある。魔道具で姿を変えると、何らかの原因で魔道具が壊れたり発動しなくなった時に困るからね。魔法で変装をリセットすることも出来るけど、そうすると髪を染め直すのが面倒なんだ。
髪の色は明るめのブラウンにした。この世界ではありふれた髪色だからね。ちなみに、染色のためのカラー剤は俺のお手製。自然由来の髪に優しい染色剤だ。色を増やして売りに出すのもアリだなー。
「しかし、名前ですぐ分かるのではないですかのぅ?」
「それに関しては大丈夫」
そう言って、変装用のメガネを掛ける。
「これには認識阻害の他に、アシェラッドとして記憶していても姿があやふやになるよう魔法がかけられてるんだ」
「なんと…諜報活動をする者が欲しがりそうな魔道具ですな」
「ピアスと対になってて、眼鏡だけあっても作動しないから落としても大丈夫だし、コレの事がバレても解析出来る人は居ないんじゃないかな?」
モブとして学院生活を送るためなら努力は惜しまない。前世の知識を総動員してあらゆる事態に対処できるよう万全を期しているのだ。
「バレたらじーちゃんに貰ったって言えば万事解決だし」
「これ以上儂の寿命を削らんでくだされ…」
「じーちゃんまだ寿命たっぷりあるでしょ」
そう。この教皇はお爺ちゃんの姿に変装ををしているだけで本来は若々しいハイエルフなのだ。世界の浄化のために神が降臨する際にサポート役として代々『神託』スキルを持つハイエルフが教皇として勤めていて、じーちゃんは代替わりをして千年ほどの若いハイエルフなのだとか。
教皇がハイエルフというのは、公然の秘密…とまではいかないが、割と知られている話なので最終的に『教皇様が持っている古代の魔道具です!』と言ってしまえばすべてが有耶無耶になるのだ。いやー、便利だね!
「はー、神のお守りより大変じゃぁ」
すまんな、じーちゃん。
入学式はもうすぐ。モブ令嬢に俺は…なる!
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