第14話 や、やらかしたー!

「くっ、霧が…っ」

「何だったんだ…?」

「あれ、さっきの貴族は…」

「あっ、あっちにもいました!」


はい、釣れた!


「えーっと、冒険者達は…ふむふむ、あっちだね」


走りながら冒険者達の動きを確認する。前方に2名、他の冒険者は近くには居ないようだ。今はあえて気配も何も隠していないので冒険者達はこちらに狙いを定めているだろう。なので、そのまま彼らの方へ突っ込むことにした。


「おっ、獲物がきやがった」

「うん?クソガキ共に追いかけられてんのか?」

「丁度いいじゃねーか。纏めて遊んでやろうぜ」


…と相談してるようだが、残念。遊ばれるのはお前達だぞ〜?


「そぉら!逃げろよぉぉぉ!!」


冒険者の一人が手に持った木剣を持って大きく振りかぶった。


「『弱雷撃スタン・ガン』」


人差し指と親指でL字を作り、その間に微量の雷を発生させる。魔法でスタンガンを再現したのだ。


思いきり加速して冒険者の懐へ飛び込む。油断していたのか、大きく振りかぶっているので胴はガラ空きだ。


雷を発生させた手でお腹に触れると、バチッと音が鳴る。スタンガンが当たった冒険者は「ぎゃっ」と小さく声を上げてそのまま後ろへ倒れた。


もう一人の冒険者は後ろから来ていた集団の方を向いている。おぉ、男子集団もなかなか健闘してるな。ま、追いかけたことも暴言も許さんけど。


「うぐっっ」


冒険者の背後から飛び上がって背中を踏み台にし、さらに高く飛んで男子集団の向こう側へ着地する。いやー、ここまで動けるって前世では味わえなかった感覚で楽しいな!


「あっ、あいつ―」


男子達の方を振り返って、ニッコリと淑女の礼をする。何故かって?煽るためだよ!


「ち、ちくしょぉぉぉ!!!」


男子集団が真っ赤になって追いかけてくる。その後ろから背中を蹴られた冒険者も追いかけてきているな。


「鬼さんこちらですよー♪」

「くそっ、舐めやがってぇぇぇ!!!」


あっ、やりすぎたかな?何か殺気が漏れてますよー?


「おや…何やら騒がしいですね」

「あぁ、入学予定生徒の実技が行われているのですよ」

「ふむ…殺気を放っている者が居るのは毎年の事なのですか?」

「えっ?」

「ちょっと見学していきましょう」

「はっ、はい!」


見学者が来ているのに気付かなかった俺は、冒険者達をからかいながら走り回っていた。ちなみに、男子集団は早々に息切れして脱落している。


「なっ、なんて貴族のオジョーサマがあんなに走れるんだよ…っ」


男子集団が悔しそうにしている。ふっふっふっ。


「貴族はね、3歳の頃から様々なことを学ぶのよ」

「えっ?」


男の子達の側に座り込んで、目線を合わせる。ビックリして固まってるけど、貴族に対しての考え方は改めて貰わないとね。


「貴族の家の子供はね、生まれた時から生き方が決められてるの。だから、自由に遊ぶ時間なんて殆どないのよ?」

「何言って…」

「午前中は歴史や礼儀作法の勉強。午後は剣術や魔術の稽古に貴族同士のやり取りの練習…そんな毎日なの」

「…っ」

「贅沢は羨ましい?でもね、慣れてしまえば退屈なだけよ。私から見れば、知識と手腕かあればどんな事でも出来る、自由とお金を手に入れる事のできる貴方達の方が羨ましいわ」

「そんなの…」

「私達が羨ましいと思うなら、知識を身につけなさい。妬むだけでは変われないわよ?」

「…」

「さて、それじゃ私は行くわね」

「えっ、どこに…?」

「あの冒険者達をギャフンと言わせるのよ!」

「ぎ…ぎゃふん?」


冒険者は全部で五名。うち一人は私がスタンガンで倒してるので残り四名。さて、全員にギャフンと言ってもらいましょう!


「見つけたわよ!!クソガキ!」


私に気付いた女魔法使いが杖を向ける。杖の先に炎が集まっている。あのままこっちに向けて放ったら、後ろにいる男子集団も巻き添えだが気付かないのだろうか?


「ま、やらせないけどね。『反射陣リフレクション』」


杖の前に魔法陣を展開する。もちろん、向こうからは見えていない。


「燃え上がれ、『劫火の矢』よ!」


女魔法使いが魔法を放った…が、魔法陣に反射されて自身が燃え上がることになった。


「きゃぁぁ!!!なんでぇぇぇ!!!!」


なんか、物凄い勢いで燃えてるな。冒険者は装備があるから見た目ほどのダメージにはならないとは思うけど、そんな魔法を放つ気だったのかよ…危ねーな。


その後は、穴に落としたり樹の上に引っ掛けたり…と終了の鐘が鳴る頃には冒険者は全員グッタリしていた。


楽しかったけど…完全にやりすぎたね!

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