第10話 新しい講師と授業
「アーシェ、今日から新しい先生が来てくださるよ」
洗礼の儀から数日後、朝食をとっていると父からそんな事を知らされた。
「あたらしいせんせい?」
「洗礼の儀で技能を授かっただろう?今までは礼儀作法や歴史といった基礎的な勉強だったが、今日からは技能を扱うための勉強もするんだよ」
「そうなんですか…」
「今日来るのは俺の部下なんだが…合わなければ遠慮なく言うんだぞ」
「???」
正直、剣術以外は勉強しなくても大丈夫なんだがなぁ…
朝食後、早速新しい講師との顔合わせがあった。
「王宮魔導士のオリバーっす!」
なんか凄いチャラい奴が来た。王宮魔導士と名乗っていたから父の部下だと思うが…大丈夫なんだろうか?
さて『魔導』とは、簡単に言えば魔法全般の事で、攻撃魔法や補助魔法など内容は多岐にわたる。ここから、魔法を伸ばす方向性を偏らせると『魔導(攻撃)』や『魔導(支援)』と括弧書きで表示されるようになる。
ちなみに、
ゲーム内では『スキルレベル』というものがあったが、この世界では認知されていないようだ。とはいえ、修練しなければ技能は伸びないのでスキルレベルは存在していると俺は確信している。
オリバーの説明も、俺が知っているスキルのシステムと同じだったので一般的な知識のようだ。
「それじゃ、早速魔法使ってみましょーか」
「へ?」
「手本見せるっすよー『
「ひゃぁっ!」
ゴウッと手のひらから放たれた魔法が的に当たって燃え上がった。
な、な、な、なんだこいつーー!!!!
突然的に向けて魔法を放ったオリバーは、なにやらニヤニヤとしている。
なるほど、オリバー君。「ガキなら難しいことなんてわからないだろうし、適当に魔法を見せときゃ楽ショーっしょ」とか思ってるな?…甘いぜ。
「『
「え…」
俺の手から放たれた魔法が、キィンッと甲高い音をさせながら的を撃ち抜いた。
オリバーを見ると、真っ青な顔でこちらを見ている。ちょっとやりすぎたかな?とは思ったが、見た目や立場だけで相手を侮るようなヤツは父の部下に居てほしくはないのだ。
「オリバーせんせい、ありがとうございました」
まだ青い顔をしているオリバーに向かってニッコリと微笑むと、俺はとっととその場を後にした。俺の護衛や侍女もいる前で適当な事やるなんてある意味大物だと思うが、もしかして俺や使用人の言葉なんて聞くわけないとか思っているんだろうか?
「合わなければ遠慮なく言うんだぞ」と言われているので、遠慮なく報告させてもらう。
魔法の訓練用に動きやすいパンツスタイルに着替えていたので、そのまま護衛と体力づくりに励んだ。
「アシェラッド様はまず体力づくりに重点を置いたほうがよろしいですね」
俺の護衛はローガンという騎士とトリティという女性騎士だ。二人は双子で父の遠縁にあたる。
二人は俺のことを考えて指導してくれるし、俺の意向もちゃんと汲んでくれるから有り難い。
剣術についてはスキルがあるから苦労はしないが、体力面には大いに不安があるので基礎体力の向上をする方向で話はついた。
昼食の後は昼寝の時間だ。
午前中の疲れを癒やしたら、座学をして1日が終わった。
「ただいま、アーシェ。魔法の授業は楽しかったかい?」
夜、帰宅した父がサロンにやってきた。
「オリバーせんせいは、なんかむずかしいはなししてから、まほうをばーんってしたの」
「…ほう?」
父の目がキラリと光る。
「あのね、まどうはたくさんのまほうがつかえるっていって、すぐにまほうをつかったの」
「そうなのかい?」
父が護衛に訊ねる。
「魔導について早口に説明されたあと、お嬢様の真横で突然火弾を放ち、お嬢様に対して不遜な態度をしていらっしゃいました」
「あのね、アーシェびっくりしてちょっとないちゃったの」
「そう、良く頑張ったね」
「オリバーせんせい、うごかなくなったからトリティとはしったり、たいそうしたの!」
父が護衛に目を向けると、トリティが頷いた。
「お嬢様はまず体力づくりに重点を置いたほうがよろしいかと判断いたしました」
「うん、そうだね。良い判断だ」
父はニッコリと笑いながら俺の頭を撫でると、スッと立ち上がった。
「オリバーにはキチンと指導しないとダメだね」
…表情は見えないが、何やら黒いオーラを感じる。オリバーよ永遠に。
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