第6話 家族の団らん
今日は朝から屋敷内が慌ただしい。
「アシェラッド様、本日はこちらのお部屋でお過ごし下さい」
そう言われて連れてこられたのはサロンルーム。普段は家族や親しい人達と過ごす為の部屋なのだが、今日はぬいぐるみやおもちゃが置かれている。
並べられた縫いぐるみにモフンと抱きつくと、そのままゴロゴロと転がる。侍女たちがニコニコと見つめる中、縫いぐるみで寝床を作って埋もれてみた。いやー、一度やってみたかったんだよね。
そんな感じでモフモフと戯れていると、部屋のドアがノックされた。
「アーシェ…おや?アーシェは何処なのかな〜?」
父が縫いぐるみの中でモフンとしている俺を探すフリをしながら脇をくすぐってくる。
「きゃ〜!ふふふっ」
「ここだな〜?」
「きゃはははっ!」
コチョコチョとくすぐられて、思わず笑い声が出てしまう。…幼女だからね、楽しくなっちゃうんだ。中身は大人だが、最近は身体に精神が引っ張られている気がするな。
「そーら、捕まえた!…さ、出迎えに行くよ」
「あぅ〜?」
「お兄様達が帰って来るんだよ。アーシェは覚えているかな?」
…兄達?
ポカンとした俺をよそに、父は俺を抱っこしたまま部屋を出ていく。玄関ホールまでいくと、何やら賑やかな声が聞こえてきた。
「父上!」
「おかえり、皆元気だったかい?」
「父上ご無沙汰しております」
「ただいま、父上!アーシェは大きくなったなぁ」
「父上、ただいま戻りました」
そこに居たのは、父と母の遺伝子をこれでもか!と詰め込んだかのようなキラキラした少年達が四人。どうやら、彼らが俺の兄達のようだ。
そのまま、母の待つサロンへと向かう。
「おかえりなさい、元気にしていたかしら?」
「母上、ご機嫌麗しゅう」
「皆元気にしていましたよ」
「母上、お元気でしたか」
「ただいま、母上」
どうやら、報告がてらここでお茶をするようだ。使用人たちの手によって軽食が運ばれてくる。
「学院はどうだい?」
「休暇前考査はそれなりに」
「アル兄様は学年首位ですよ!」
「エルドとジョシュアも十位以内だったじゃないか」
「ディオはどうだったんだい?」
「私は5位にしておきました」
「…ディオ兄らしいや」
なるほど、彼らは学生で成績も優秀らしい。その後も学校生活の話などが続いた。彼等の話を総合すると、6歳になると学院に入り15歳まで様々なことを学ぶようだ。長男アルフレートは総合科で次男ディオニスは騎士科に所属し、三男エルドナーシュと四男ジョシュアは初等科で学んでいるようだ。
そして、俺が3歳を過ぎる頃から家庭教師が付けられるのを知った。早すぎない??貴族ってそういうもんなの?
いつもは両親と俺だけだったから、この賑やかさが何となく楽しい。家族皆の仲が良くて、前世では味わえなかった『家族団らん』の空気は暖かくて心地よかった。
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