青嵐
第13話 青嵐(曹操軍)
未だ日も昇らない草原を騎馬の一軍が影のように抜けていく。一糸乱れずにそろり、そろりと闇から闇を渡り歩く姿は今日までの訓練の過酷さを物語っていた。
乾坤一擲。持久戦が望めない以上はこの一撃に全てを乗せなければならない。
昨日までに斥候が確認した情報によれば、
しかし、数を頼みとした行軍には必ず付け入る隙がある。事実として、孫権軍の布陣は奇襲への備えが万全とは受け取れないものだった。いや、準備をしたつもりだったのだろうし、並みの将を相手にしたならば防ぎようはあっただろう。
―ありがたいものだな。
張遼は曹操の慧眼と訓練が行き届いた決死隊の双方を思い浮かべてほくそ笑む。ひとまず、真っ先に為すべきことは達せられるのだ。
彼我の距離は目と鼻の先。今すぐに防備に走ろうと到底間に合わないところまで詰めることが出来ている。
針先に糸を通すが如き極小の希望であれども『罅』には違いない。ならば、晒してくれた敵の穴を突かぬは不作法。
鮮やかに、魅せる戦をここで披露する。
「突撃ィィィィィ‼」
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