第6話 襲来(曹操軍)
扉が開き、俯いていた
「李典殿は?」
「時を要せずに…」と言いかけたところで扉が開く。現れたのは、今度こそ李典だ。部屋の空気がまた一段と重くなり、誰もが言葉を発さずに緊張の海原を漂っている。
「私情に振り回され大変なご迷惑をおかけしました」
李典が言い終えると張遼が立ち上がり、拱手を行う。非が無かったことは誰の目から見ても明らかな行動だっただけにその場に居た全員が呆気に取られる。
「某も配慮が足りていなかったと。つきましては、改めて共に戦っていただきたく」
張遼の申し出に李典は拱手で応じる。
「滅相もございません。私こそよろしくお願いします」
改めて全員が席に着く。確認すると薛梯が結論から口にしていく。
「では、張遼殿と李典殿が奇襲を仕掛ける。楽進殿と私めが合肥城の守護に残る。以上で異論はないでしょうか?」
全員が頷いて答える。ここに来てようやく意思が一致したことに薛梯は胸を撫で下ろす。肝心なことはまだ何も始まっていないのに1日の仕事を終えたような達成感がある。仕事は終わっていないから口と手を動かすことは止めない。
新たに机の上に設置した合肥周辺の地図に目をやる。
「先ほどの張遼殿の話を聞くに
「そう仮定するなら孫権軍が合肥城に到達するのは今から2日後。正午には包囲網が形成され始めるということになりますね」
「となると、攻撃の機会は到着してからの夜半と未明。そのどちらかを突けば孫権軍を大いに攪乱することが叶う」
「しかし、問題となるのは兵たちもでしょう。いくら大軍で油断が存在しているとはいえ生半可な攻撃は通用しない。更に敵が備えていれば、こちらが餌食になることになる」
楽進の提案に張遼が付け加える。3人が蟠りを解いたとはいえ最大の問題は戦線で戦う兵卒たちだ。こうなる可能性を伝えたうえで彼らがこの場にいるとはいえ実際に目の当たりにすれば話は変わってくる。
「説得は某が行いましょう」
張遼が前に名乗り出る。
「いえ、私も行きましょう」
楽進も立ち上がる。
「私が為すべきことはお三方と同じ。ならば、張遼殿だけに労苦を押し付けるわけにはいきません」
毅然とした面持ちで楽進は宣言する。続く形で李典も立ち上がる。
「自分も同行させて下さい。不仲ではないと示さなければ誰も納得はしないかと」
2人の厳然たる姿勢を見せつけられて張遼は折れ、
「申し訳ない。よろしくお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます