第26話 煽る令嬢
「ああん? んだよっ!」
「そんなふうに~、感情的にならなくてもいいのでは~? 冴えない顔がひどい顔になりますよ~?」
「っ!?」
バニアはわざとらしく煽るような口調で会話に加わってきた。もちろん、すでに苛ついてたカリブラは嫌そうに振り向く。
「私の耳にも聞こえてしまったのですが~、アスーナ様の言葉通りにカリブラ様が~、アスーナ嬢と婚約していた時から~、ソルティア様とデートするほど仲良くしていたということは~……それって、浮気をなさっていたということでいいですかぁ?」
「なんだよ、そんなこと……って、ええ、浮気?」
煽るような口調はそれだけでも相手の苛立ちを増長させるというが、それをバニアはうまく利用している。カリブラを意図的に怒らせて情報を引き出したのだ。カリブラが不利になるような情報を。
「だって~、アスーナ様本人ではなく~アスーナ様の妹さんとデートぉ? 婚約者以外の女性を連れてお出かけしたりお買い物するってことは、浮気をなさっていた証拠じゃないですか~?」
「んなっ!? 何を言うんだ!? ソルティアはアスーナの妹なんだから婚約者の妹とちょっと遊んだだけじゃないか! 何もやましいことはないはずだ!」
カリブラはバニアの意図に気づいたようだがすでに遅かった。ソルティアに対する苛立ちとアスーナに対する怒りで思考力が鈍っていたため言い訳も間違えた。
「あらら~? 我が国ではいつから『婚約者を蔑ろにして、その妹と仲良くすることは浮気ではない』ということになったのでしょうか~?」
「あ! い、いや、ちが、違うんだ! 本当は、」
「違う? あ~、ドッキリというやつですか? いい年しておきながらドッキリなんて幼児みたい。貴族の紳士にあるまじきことですわ~」
「お、お前っ!」
カリブラはバニアに対する怒りで顔を真っ赤に染めた。バニアに言われたことは数日前に参加したパーティーでハラドに言われたこととほぼ一緒だったせいだろうが、貴族令嬢に煽るように言われたことが我慢できなかったようだ。カリブラの頭の中では『格下にコケにされた』とか『女に煽られた』としてプライドに傷ついたわけだ。
「ふざけんなよ! よくもこの僕を侮辱したな!」
「あら~、本当のことを言ってみただけですわ~?」
確かに本当のことだ、と誰もが思う。その場で聞いてしまった全ての生徒がだ。
「うるさい! ソルティアと仲良くしていただけで浮気だなんて断じてありえない! 僕にはそんなつもりはなかったんだよ! 確かにアスーナよりも気が合う仲ではあったが、異性として接していたわけでは、」
「あらま~、『気が合う仲』ですか~? お金を貸してくださったり課題を代わりにやってくださったアスーナ様を差し置いて~、その妹とデート~?」
「うぐ……」
(バニア、痛いところ突くわね)
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