第25話 とんでもない妹

「ソルティアのせいで僕も家族も迷惑してるんだ! 母上の怒鳴り声が飛ぶし、父上はただでさえ病弱なのにストレスで体調が更に悪くなるし、何故か全ての責任が僕のせいになるし、婚約者だからということで弟にまでバカにされる始末! おまけに馬鹿だから何度言っても言うことも聞かないし……何なんだよ! お前の妹は脳みそに菓子でも詰まってんのかよ!? 姉のお前と違うとは思ってたけど、性格も頭も悪すぎだ!」


(馬鹿なのもあるけど性格的にカリブラ様の言うことを聞きたがらないんでしょうね……)



ソルティアは頭は良いとは言えないし我儘で自分勝手な娘だ。おそらくはカリブラの言うことは理解していても理解していなくても言うことは聞かないだろうというのがアスーナの予想だ。


カリブラの言い分は、そんなソルティアを聞き分けのいいようにしたいというわけだ。



(カリブラ様はともかく、そののご家族にも迷惑を掛けていることに関しては申し訳ないけど、あの子の性格に関しては私が何を言っても無駄。私のことも下に見ている節があるからね。まあ、それ以上にカリブラ様のために動く義理もないんだけど)


「ソルティアはお前の妹だろ! とんでもない妹を押し付けやがって! あいつの姉なんだから大人しく慎ましくするように言い聞かせろよ!」


「お断りいたします」


「はぁっ!?」


「妹の行動に関しては申し訳もありませんが、今は貴方の婚約者ではありませんか。どうされるかは貴方が示さなくてはなりませんでしょう」


「な、なんだと!?」



アスーナが断った。それだけでもカリブラには衝撃的だった。だが、衝撃を受ける間も与えないかのようにアスーナは言葉を尽くす。



「ソルティアは、今では侯爵家の屋敷で厄介になっています。しかし、それはカリブラ様が婚約者だからという理由で承諾なさったからでしょう。常識的に言えば婚約者とはいえ、伯爵令嬢が侯爵家の屋敷に嫁入り前に移り住むなどあり得ないにも関わらず、貴方とソルティアが強引に押し通して今の状況があるのでしょう? それを私が押し付けたかのように言うのは筋違いなのではなくて?」


「そ、それは……だけど……」


「そもそも、貴方はソルティアの性格を理解していたはずなのでは? 私よりもソルティアのほうが気が合う感じだったではありませんか。二人で私に対して金を貸せだの課題をやれだの……挙げ句には私をほったらかしてソルティアとデートをするほどの仲でしたのに今になって文句を言われても困りますわ」


「そ、そんなこと言ってもなっ……!」



ソルティアが侯爵家に住み着いたのはカリブラの責任だと言われ、更に元々ソルティアと仲が良かったから性格も理解していたはずだという指摘までされて言葉に詰まるカリブラ。


その隙をバニアは見逃さなかった。話に入り込む好機だと。



「あの~、すみませ~ん。わたくしバニア・モタスはアスーナ様の友人として聞き捨てならない話を聞いてしまったのですが~、質問しても?」

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