第62話
サスケ 川のそば
サスケは何度も口をゆすいでいた。
「お前らいつか殺すからな……」サスケは言った。
ルークたちは川のそばへ来ていた。この川は村から十分に離れていた。
ここなら花の影響は大丈夫だろうと、村長に教えてもらった場所だった。
「それにしてもサスケちゃんは本当によく食べるわね」エキドナは言った。
「すべて人の家から盗んだものであるということはこの際水に流そう」ルークはいった。
「文字通り水に流れていったわね」エキドナは言った。
この状況で楽しそうなのはエキドナだけだった。
ルークはサスケの視線を受けて肝が冷えている。
サスケの恨みがましい視線を受けてルークは複雑な気持ちだった。
そんなサスケが不吉なことを口にする。
「あれ?なんか生えている……?」サスケは言った。
サスケの独り言、その言葉にルークは振り返る。聞き捨てならない一言だった。
「サスケ、なにがあった?」ルークはいった。
サスケは口を押えて首を振った。
「何でもない……。そうなんでもないの……」サスケは言った。
ルークはサスケの目が泳いでいるのを見た。昔からの癖でサスケは嘘をつくとき目が泳ぐ。
ルークは嫌な予感がした、サスケに詰め寄る。サスケは口元を抑えつつ、後ろに下がった。
“これは完全に怪しい”ルークは思った。ただし、このままだとサスケは猿芝居をやめないだろう。大根役者はルーク以外にもいた。サスケに問いただしてもごまかすだけだ。らちが明かない。
ルークは秘策を使うことにした。
「サスケ、これを見ろ」ルークは言った。
サスケの目の前に、数日前のナマズ串をだした。
ルークが勇者の剣の能力で保存したものだ。
ルークは実験としてルークの勇者の剣を試していた。ルークの勇者の剣の能力は『結界』。結界の中に入れていた食べ物はどのくらい鮮度を保つのかを調べていた。
ルークは自分で食べてみたところ、味、においに問題はなかったのでここで取りだしたのである。
ナマズ串をみたサスケの目の色が変わる。サスケは手を伸ばした。ルークは何もせずにサスケにナマズ串を手渡す。サスケがナマズ串を口に含む瞬間、ルークはサスケの口の中を確認した。
サスケはルークの罠にはまったことも忘れてナマズ串にかぶりついた。
幸せそうに咀嚼をしていたが、その様子がおかしい。
サスケの顔が、ゴムまりでも食べているかのような表情になる。ついにサスケはナマズ串を吐き出した。
「なにこれマズイ!グレープフルーツにケチャップをかけた味がする」サスケは言った。
その言葉を聞いたエキドナが戸惑う。
“あれ?サスケちゃんのバカ舌がまともになっている……?”エキドナは思った。
ルークは衝撃から立ち直ると、エキドナにルークが目撃したものを伝えた。
「エキドナさん、サスケの舌から花が咲いています」ルークは言った。
エキドナとルークは話を整理した。
ちなみにサスケは、熱心に舌を洗っていた。花を落とすためではなく、ナマズ串の強烈な味を洗い流すためだった。
ルークはそれを横目で見ながら考えていた。
“実は俺ってサスケ並みのバカ舌だったんだな……”ルークは思った。
ルークは遠い目をする。
「ルークくん、現実逃避はまた今度にして。今は直近の問題について考えないと……。サスケちゃんのバカ舌が治ったのは喜ばしいけど、花には寄生されちゃったみたいよ。どうするの」エキドナは言った。
「どうするもなにも、花には対応しましょう。どうやって直せるかは全然分かりませんが」ルークは言った。エキドナは内心でうなずく。
“そうサスケちゃんを切り捨てる選択肢はないのね……“エキドナは思った。もしエキドナがルークの立場であれば、このまま何もせずに旅をつづけただろう。今のところ問題点はないからだ。太陽の光さえ定期的に浴びていれば、花は問題にならないと村長も言っていた。
「それじゃあ、村長からの依頼をうけるのね」エキドナは言った。
「もちろんです。これでこの問題は僕らの問題にもなったってことです。より本気で取り組めますよ」ルークは言った。
ルークの言葉を聞いて、エキドナはにっこり笑った。
「そうこなくっちゃ。じゃあ明日になったら早速、花屋敷に行ってみましょう。おそらくそこに答えがあるでしょう」エキドナは言った。
「えぇ。サスケにもそのことを伝えてきますね」ルークは言った。
ルークは立ち上がると、川で魚を捕まえだしたサスケの元へ行く。
“今となっては『ナマズ串』を楽しめるのは俺一人なんだな……”ルークは思った。
サスケは魚を塩焼きにして食べた。エキドナにとって喜ばしいことに『特性タレ』は使われることはなかった。
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