第49話

サスケ 現実世界



サスケは目を覚ました

映画館から現実世界に戻ってきていた。そばにはルークの姿がある。

ルークがサスケの瞳をのぞき込む。

「サスケ大丈夫か?」ルークが言った。

サスケは直感する。“あぁ本物のルークだ”サスケは思った。


サスケはルークを抱きしめる。ほんとうにありがとう。サスケの中で感謝の気持ちがあふれ出ていた。その気持ちがブレイブとはまた違った形で結晶化していく。


サスケはそこで気づく。まだシロと戦闘中だったはずだ。

「ねぇシロはどうなったの?」サスケは言った。

「姿が見えないんだ。たぶんまだ戦いは終わっていない……はずなんだが……」ルークは言った。


サスケは映画館の中にいたシロを思い出す。

“なにか仕掛けてきそうな感じだったけど……。嫌な予感がする”サスケは思った。


サスケの嫌な予感は的中した。


サスケのそばで勇者の剣が倒れる。

勇者カイザーの剣がぽきりと折れていた。


ルークは戦慄した。勇者の剣が折れるとは、それは所有者に何かがあったときだった。

“カイザー様に何があったんだ?そもそも勇者の剣は折れるものなのか……勇者が死んだら剣は元の剣に戻るはずじゃないのか……”ルークは思った。

全く何が起きているのかわからなかった。

ただ一つわかっているのは、嫌な予感は消えていないという事だけ。

ルークは意識して呼吸を整える。

そんなルークの手にサスケの手が触れた。

ルークが隣を見れば、サスケは笑いかけた。

「わたしたちなら大丈夫」サスケは言った。

サスケの言い方にルークの頬がほころぶ。

「そうだな」ルークはいった。

ルークはサスケの手を握り返した。


カイザーの体から闇があふれ出した。高圧ボイラーのように、カイザーの体から沸騰した魔力が噴き出す。そこへ耳障りな笑い声が響いた。

「ぎゃははは!なんだこの体すげぇ。すげぇぞ!魔力が溢れてくる。このカイザーってやつもしかして魔王か?おもしれぇ」ブギーマンは言った。


ブギーマンはカイザーの体を乗っ取ったのだ。ルークはそう直感した。

カイザーの体が風船のように膨れ上がる。そのプレッシャーにルークは息をのんだ。


「これは俺たち死んだんじゃないか?」ルークは言った。

「そうね。とりあえずわたしよりは長生きしてよ。わたし未亡人はいや」サスケは言った。

「そんなの誤差の範囲だろ……」ルークは言った。


ブギーマンの体はさらに膨らんでいった。

ブギーマンは叫ぶ。

「ぎゃはははは!ルーク、サスケ!また来世で会おうな。とりあえず全勇者ぶっ殺してくるから」ブギーマンは言った。


ブギーマンの体がパンパンに膨らむと今にも破裂しそうだった。

“コイツ!これだけの魔力をここで爆発させるつもりか……。やばい!”

「サスケ!俺の影の中に非難しろ」ルークは言った。“サスケだけでも守らなくては”ルークは思った。サスケは首を振る。

「いやだ!断る!他の方法で私を守って!」サスケは言った。

サスケにとって一番恐ろしいことはルークを失うこと。ルークのいない世界で生き延びること。ルークのいない暗い世界で生きるくらいなら死んだ方がマシだった。

ルークはサスケのバカみたいな返答を受けて、やけくそになった。

「分かった!任せろ!」ルークは言った。

“そんなこと言ったって、どうしようもないよなぁ”ルークは思った。


そのとき、ルークの視界の端で勇者の剣が光った。折れたはずの剣に呼ばれている気がした。

「サスケ!あの勇者の剣、呼んでいる気がする」ルークが言った。サスケも剣に気付く。

「たしかに!カイザー様っぽい」サスケはいった。


そのときブギーマンの体が臨界点に達した。破裂したからだから高密度の魔力がほとばしる。極限まで圧縮された魔力は物理的な波紋となって広がった。魔力に触れたところから崩壊が始まる。


「急いでルーク!早くしないとわたしのお肌が崩壊しちゃう」サスケはいった。

「おい!この状況でふざけるのマジやめろ。崩壊したってあんま今とかわらないだろ」ルークは言った。

「お前は転べ」サスケはいった。


間一髪だった。

衝撃波よりも先に剣に手が届く。

ルークが剣の柄を持った瞬間、時間がとまった。


ルークは直感のまま折れた剣を構える。剣を持った瞬間、力が流れてくるのを感じた。

“この感覚はカイザー様の剣の効果だ……”ルークは思った。

ルークは折れた剣に魔力をこめる。剣先をルークの魔法で充填する。

ルークは剣を構えた。

「新必殺技だ!『カイザー・エクスプロ―ジョン』」ルークは言った。

そのまま剣を振りかぶる。


ルークが放ったのは光の魔法だった。

カイザーの勇者の剣が闇のように黒かったのとは対照的だった。

ルークの勇者の剣は光でできていた。


ルークが振るった剣先から生まれた光の剣が、ブギーマンの衝撃波を阻んだ。


ルークのブレイブが勇者の剣に認められた。

勇者ルークが誕生した。


ルークは魔力を使い切って倒れ込むとそのまま3日間眠りについた。

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