第48話

サスケ追憶


サスケが物心ついたとき。サスケが気づいたら夕焼けが山を赤く染めていた。

ルークと出会う前の話。サスケはなんとなく自分が親に捨てられたことを自覚していた。


食べるために必要なものをそろえた、落ちていた刃物。偶然見つけた火。いい感じの寝床。生きるために必要なサバイバルスキルをすべてそろえた状態だった。獣を狩って、泉の水を飲みサスケは暮らしていた。


“あぁきみも捨てられたんだね”シロは言った。

サスケの昔の思い出をシロも見ていた。

気付けばサスケは映画館にいて、となりにはシロが座っていた。スクリーンにはサスケの過去が上映されていた。

「ここはどこ?」サスケは言った。

「僕の映画館だよ」シロが言った。


シロがポップコーンをサスケに差し出した。

サスケは受け取って一気に流し込む。ポップコーンは塩が効いていておいしかった。

サスケは空になったカップを突き返すと、シロは笑って受け取った。サスケはシロににっこり笑いかけた。「ご馳走様」サスケはいった。


シロはどこからか他のポップコーンを取りだすと、ぽりぽりと食べ始めた。

サスケに話しかける。

「きみも家族がいないんだね……。僕もそうだよ。僕もずっと一人で生きてきたんだ」シロは言った。


サスケは何も言わなかった。サスケは黙って立ち上がると、スクリーンの前まで歩いて行った。

シロは黙ってみていた。


サスケは顔を上げた。その目はまっすぐシロに向けられる。

「わたしは一人じゃありません」サスケは言った。

シロはサスケの言っていることが理解できなかった。

シロに対するメッセージだと遅れて理解した。

サスケは続ける。

「わたしには家族がいます。これから人生を歩んでくれる人が」サスケは言った。

サスケの背後のスクリーンの映像が切り替わる。

そこに映し出されたのは、ベルウッドの村の仲間たちだった。

そして、サスケと家族になると言ってくれたルークの姿。


それはサスケの幸せな思い出だった。

サスケの思いに呼応してサスケの人生の名場面集が上映される。

シロはポップコーンを持ったまま画面を見ていた。どの場面でもサスケは幸せそうに笑っていた。シロは衝動的に膝をつねった。ヘビのような感情がからだの中をうねる。

“許せない……”シロは思った。どうして同じじゃない……?サスケと僕は人生でまけたもの同士のはずだろう。不幸に生まれて、不幸に育った。“なのにどうして……”シロは思った。


シロはなにか泥水の中にはまり込んでしまったような気がした。

息をしようともがけばもがくほどはまり込んでいく水たまり。

“もういいや、全部壊そう”シロは思った。


シロの大切なものが音を立てて崩れていった。

“何のために生きてきたんだっけ……?”シロは思った。


そして最悪の一手を選んでしまう。

シロはカイザーの本当の姿に気づいていた。

勇者カイザーが魔王カイザーであること。

そして、勇者カイザーが目覚めないのは、カイザーのブレイブが魔王カイザーの暴走を抑えているからだった。

“どういう経緯で魔王が勇者なんてやっているのか知らない。けれど、そんなめちゃくちゃなことをするからこんなことになるんだ。僕のせいじゃない”シロは思った。


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