第47話

サスケ カイザーのそば


カイザーの体から血が流れないことを見ても、サスケは冷静だった。

サスケはカイザーの異常性にはなんとなく気づいていたからだ。

”やっぱりカイザー様は人間じゃない……”

サスケは思い返していた。カイザーとルシファーが仲良かったこと。

そして、人間としての常識が欠けていること。サスケは一度もカイザーが眠る姿を見たことがなかった。


サスケがカイザーを見て青ざめたのは、カイザーが化物だったからではない。

カイザーの魔力が異常だったからだ。カイザーの心臓を貫かれたのをサスケは見ていた。

そして、いま貫かれた心臓は再生している。傷はもうふさがっているのだ、傷口から流れ出た魔力は濃密だった。あまりの魔力の濃さに、サスケはあてられてしまった。

サスケは逆流してきた胃液を必死で抑える。


サスケが震えていたのは、異常な量の魔力に触れてしまったからだった。

“人間が触れていい魔力じゃない”サスケは思った。


寒気がずっと止まらなかった。そして考える。

“どうしてカイザー様は起き上がらないの?”サスケは思った。

傷はふさがっているのに……。もしかして何かを待っているの……?

サスケの目にカイザー様の勇者の剣が映った。


サスケは少し怖くなる。そんなときに……サスケの耳にやさしい声がとどいた。

「サスケ大丈夫か?」ルークは言った。


サスケは振り返った。

「ルーク?ブギーマンを倒したの?」サスケは言った。

サスケは警戒する。明らかに、このタイミングでルークがここにいるのはおかしかった。ルークの視界を覗いてみても、ルークはまだ遠くにいた。

「あぁサスケちゃんは、人の視界をのぞけるんだね」ルークは言った。

ルークの体が溶けて、現れたのはシロだった。


「あなたはシロ……。ブギーマンの正体はあなただったのね。ルークをどうしたの」サスケは言った。サスケは立ち上がって、短剣を構えた。


「大丈夫、彼はまだ生きているよ。彼を殺すにはまず君を殺さないとだめみたいなんだ。ほんとうにごめんね、ちょっと君の心にお邪魔するね」シロは言った。

シロが手を伸ばす。サスケは短刀でシロの手を切り飛ばした。切り口から大量の花びらが舞う。すでにシロの術中だった。


サスケはシロの視界をジャックする。その瞬間、全身を吐き気が襲った。シロの見えている景色は悲惨だった。シロが笑う。

「あぁ僕の瞳は特別製なんだ。サスケちゃんじゃあ僕の視界に耐えられない。辞めといたほうがいいよ」シロは言った。

シロはどこまでも優しい声で言った。

サスケはシロの赤い瞳から眼をそらすことができなかった。


サスケはその瞳に昔の夕焼けを思い出していた。

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