第32話

ルーク牢屋


ルークは荒れていた。

「カイザー様はなんであいつらのいう事を受け入れたんだ」ルークは言った。

鉄格子を叩く。

「ルーク落ち着いて、カイザー様は何か考えがあるのよ」サスケは言った。

サスケはずっと狐と遊んでいる。

ちなみに狐はカイザー様に命名されていた。

"『ルシファー』というのはどうだろうか?"カイザーは言った。


その一言で狐の名前はルシファーに決定した。サスケは子ども状態のルシファーと遊んでいる。サスケはルシファーの頭をなでる。

「ルーちゃんは神聖魔法が使えてすごいねー」サスケは言った。


ちなみにこの場所にカイザーはいない。

『異端審問』に呼び出しを受けているからだ。


勇者を幽閉するなんて異例だった。この街の教会の独断であろう。

勇者に異端審問なんて聞いたことがない。


“カイザー様無事でいてくれ”ルークは思った。

ルークは落ち着かず、うろうろと牢屋の中を歩く。

コツコツと無機質な音が牢屋内に響く。

その音に反応してネズミが逃げた。


そこでルークは気づいた。サスケに声をかける。

「なぁサスケ。この街やたら小動物がおおくないか?」ルークはいった。

街についてからというもの、やたらと鳥やネズミに見られている気がする。

「そうだよ。あれが監視の目になっているの」サスケは言った。

サスケは楽しそうにルシファーと遊んでいる。

ルークはその事実に面食らった。

「知っていたのに、なんで教えない!」ルークは言った。

「カイザー様に口止めされていたからだよ、ねールーちゃん」サスケは言った。

ルシファーはコロコロと楽しそうに笑う。

ルシファーはルークを指さした。ルークはそのけがれない目に、少し動揺する。

「ば、か、……?」ルシファーは言った。

「しゃべったー!!ルーちゃんがしゃべったよ」サスケはいった。

待て。ちょっと待て。ルークは思った。ただし、サスケの興奮をおさまらない。


「そうだよルーちゃん。あれが『ばか』だよ!よくわかったね」サスケは言った。

サスケはルークを指さしながらなんども『ばか』といった。

サスケは嬉しそうに手を叩く。ルシファーも嬉しそうに手を叩いた。

「ばか。ばか。ばか」ルシファーは言った。

「ルーちゃんおりこう!」サスケはいった。

サスケはルシファーを抱きしめる。ルシファーは嬉しそうにはしゃいでいる。


ルークは思わず鉄格子を握りしめた。

“こいつら、ぼこぼこにしてやろうか……”ルークは思った。


ルークの怒りを察したのか、ルシファーは銀狐の姿に戻った。

ルシファーはするりと鉄格子を抜けて外へ行ってしまった。

ルシファーは鉄格子の向こうでじっとサスケを見つめる。

「ルーちゃん?なにか伝えようとしているの……?」サスケは言った。

ルシファーは尻尾で自分の影を示す。ルークは気づいた。

「サスケ。もしかして、ルシファーの影でも『影渡り』ができるんじゃないのか?」ルークはいった。

サスケも合点がいったようだ。

「ちょっと試してみるね」サスケは言った。

サスケは自分の影に潜ると、ルシファーの影の中から現れた。

『影渡り』成功。


そこで、ルークは思い至る。自分だけが牢屋の中にいることに。


「じゃあねルーク」サスケは言った。

「ばいばい」ルシファーは言った。


「おい待て!鍵を開けろ。その辺にきっとあるから」ルークは言った。

“こいつら、俺を置いていくつもりか……”ルークは思った。

牢屋に一人ぼっちとか寂しすぎる。ルークは必死に訴える。


「ごめんねルーク、だれか残っていないとカイザー様が戻った時に大変だから」サスケは言った。ルシファーはサスケの肩に乗っかる。あざけるようにルークを見る。“あざけるように”は勘違いだ、ルークは目を閉じて呼吸を整える。ルシファーはタダの狐、自分の考え過ぎだろう。


ルークが再び目を開いたとき、もうサスケたちは消えていた。


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