第31話
ルーク VSサイクロプス
ルークは吠えた。そして剣を振りかぶる直前、ルークの力が底上げされた。
“来た、カイザー様だ”ルークは思った。
カイザーの勇者の剣の効果がフィールドを包む。
同時にサイクロプスが悲鳴を上げる。サイクロプスが痛みにのけぞる。
どうやらサスケが目を攻撃したらしい。
ルークの体から力が抜ける。
ルークの肩に手が置かれた。カイザー様の手だった。
「またせたなルーク、まず狙うべきはあいつの足だ。イメージは魔力を圧縮することだ。いいか、鉄砲水が小さな穴から起こるように、お前の魔力を細く小さい穴から押し出すようにイメージしろ」カイザーは言った。
ルークは応える。ルークは目を閉じて、精神を集中する。
「はい、いけます」ルークは言った。
「よし、そのままぶち込め」カイザーは言った。
カイザーはルークの肩を叩く。
ルークは引き絞られた弩弓のように体中のバネを解き放った。
ルークの刀から発せられた魔力は、レーザーのようにまっすぐサイクロプスの足を切り飛ばした。さらに、遅れて爆裂が起こる。
サイクロプスは悲鳴を上げる。カイザーは手を叩いた。
「いいぞ、ルーク。技名を後で考えよう『エクスプロージョン』」とかかっこいいと思うんだがどうだろうか……」カイザーは言った。
ルークはカイザーに答えることができなかった。
魔力を使い果たして、疲労がどっと来たからだった。
カイザーはルークの荷物から回復薬を取りだして、ルークに飲ませた。
そしてもう一つ回復薬を肩に乗っている銀狐に飲ませる。
“あれ子どもから銀狐に戻っている、しかも元気な気がする……”ルークは思った。
なにか意識がはっきりしない、おとなしく回復をまつ。
カイザーは楽しそうに銀狐に回復薬を飲ませる。ルークは知らなかったが回復薬は魔族にとってダメージなのだ。銀狐はにげようとする。カイザーは銀狐の体をがっちりホールドした。
「おいおい、どうした狐くん。飲まないとよくならないぞ。そうだな5本は行こうか!」カイザーは言った。
ルークにはカイザーが楽しそうなのが気になった。もしかしたら、狐と仲良くなったのかもしれない。”狐が助けを求めているようにも見えたが勘違いだろう”、ルークは思った。
サイクロプスが吠える。ただし、足はルークの手で切断されている。
サイクロプスは筋肉で足の傷口をふさぐと立ち上がった。ただし、ダメージはあるらしく、足を引きずっている。
サイクロプスは再び棍棒を振り上げた。
「カイザー様危ない、逃げて」ルークは言った。
カイザーは笑った。
「大丈夫だルーク、この狐くんがどうやら私のことを助けてくれるらしい。……うんうん。『僕がなんとかしますよ』だって。これは頼りになる狐だ」カイザーは言った。
ルークの目には、狐はカイザーの手から逃げようとしているようにしか見えない。しかしカイザーは、狐の気持ちを理解しているようだった。
カイザーはサイクロプスの棍棒に合わせて狐を差し出す。
「危ない!」ルークは言った。
サイクロプスの棍棒が狐の張った結界に弾かれる。勢い余ってサイクロプスは転んだ。
カイザーは笑う。
「どうやらこの狐、信仰が篤いらしい。神聖魔法がつかえるぞ!今のは魔法『聖なるバリア』だ」カイザーは言った。
ルークは驚いた。キツネが神聖魔法を使えることもそうだ。しかし、カイザー様がやたらと狐に対して心を開いていることに驚いていた。見ようによっては狐をいじめているようにも見える。だが、神や教会からのおとがめ(勇者ペナルティ)はない。カイザー様のブレイブが減っていないことからわかる。
ルークは立ち上がって、魔力を貯める。
「カイザー様おまたせしました。もう一発『エクスプロージョン』打てます」ルークは言った。
そのルークの影から、サスケが現れる。
「やっほー。人々の救助終わったよー。カイザー様時間稼ぎもう大丈夫です」サスケは言った。
そして、サスケが元気になった狐に気付く。
「おー狐ちゃん、元気になったんだね。良かった」サスケは言った。
カイザーは狐を手放す。キツネは慌てて逃げ出すと、サスケの近くで人型に変化した。サスケの後ろに隠れる。
カイザーはサスケに声をかける。
「サスケ、回復薬はサイクロプスに投与してきたか?」カイザーは言った。
「もちろんです、カイザー様。たぶんそろそろですよ」サスケは言った。
サスケはずっと、狐の頭をなでている。
カイザーは言った。
「よし、じゃあルークとどめだ」カイザーは言った。
上等の回復薬をありったけ投与されたサイクロプスは悶えていた。
回復薬は魔物にとって毒だ。
ルークが『エクスプロージョン』で頭を吹き飛ばすと、サイクロプスは息絶えた。
勇者カイザー一行の完璧な勝利だった。
隠れていた街の人々たちは、勇者たちをたたえる。
しかし、そこへ教会のフードをかぶった司祭たちがやってきた。武装した兵隊たちを連れている。
物々しい雰囲気である。
人々もその空気に呑まれた。お祭りムードが冷める。
その中央で教会長の男がカイザーたちの元にやってきた。
男は書状を手にもち読み上げる。
「勇者カイザーよ、お主は神代の魔物『サイクロプス』を召喚した疑いがある。よって幽閉させてもらう」男は一方的に告げた。
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