第30話
ルーク大通り
合計20個の回復薬をもって二人は帰路についた。
最後に見せられたパメラの超絶技巧について話し合う。
「ねぇルーク、パメラさんすごかったね」サスケは言った。
「あぁ……なにか魔法を見せられた気分だった」ルークは言った。
この時の二人は知らなかったが、道を究めたものにはフローという能力が与えられる。
フローには、周囲の時間を遅くする効果があった。その奥義の片鱗に2人は触れたのだった。
「いつか私もあんな風になれるかな」サスケは言った。
「なれるさ、サスケなら大丈夫」ルークは言った。
ルークには大した根拠なんてなかった、なんとなくそう言いたかったから言った。
「そっか」サスケは言った。
サスケはルークを見て笑った。
ルークは照れ隠しに空をみた。
そこで違和感に気付く。
異常な魔力が空を覆った。
サスケも身構えた。
二人は空を見た。
空には亀裂が走り、そこから巨大な棍棒が出てきた。
小さな山ほどある巨大な棍棒だった。
街行く一人が空を指さして言った。
「あれはなんだ?」
次の瞬間、こん棒に見合った巨体が空の裂け目から現れた。
神話に出てくる、青い肌をした一つ目の巨人。
「おいあれは、なんなんだ」誰かが言った。
空を指さす。
「いいから逃げろ!」他の誰かが言った。
しかし、多くの人々は異常事態を処理しきれなかった。
サイクロプスなんて見たことが無かったからだ。
人は混乱すると判断を間違える。
サイクロプスは棍棒を振り下ろした。まるで隕石でも落ちてきたかのようだ。街の一角が陥没する。まるでホールケーキのように街が地盤から崩れた。サイクロプスは雄たけびを上げる。
そこで初めて人々が我を取り戻した。
怒声と混乱と金切り声が街に響いた。
ルークとサスケはすぐに目くばせをかわす。それだけで言いたいことは伝わる。
“わたしがカイザー様の元へ”“おれが人々を避難させる”。
サスケは回復薬を一つ掴むと、走り出した。
ルークは残りの回復薬を袋に詰めると、サスケとは反対方向に走る。
目指すはサイクロプスの元へ。ルークは恐怖で逃げ出した民衆に逆らって走る。街の人たちを声で鼓舞する。
「みんな走れ!」ルークは言った。
一つ目の巨人:サイクロプス。神話に出てくる怪物。ルークは神話を思い出していた。いろいろ危険なことはあったと思うが、一番の脅威はその大きさだ。
でかいというだけで、体力も攻撃力もけた違いになる。
サイクロプスは何か体に違和感を感じているのか、2発目を打ってこない。もしかしたら、地上の空気にまだ体が合っていないのかもしれない。
このチャンスにルークは、がれきの下敷きになった人々を助ける。岩をどけて、まだ息がある人に回復薬を振りかける。
“カイザー様はここまで見越して回復薬を用意させたのか……”ルークは思った。
サイクロプスがルークに目を向ける。回復薬はモンスターに対して不快な気分を起こす。使った人間はモンスターに狙われるようになるのだ。サイクロプスが棍棒を振り上げる。
防御など考えない大ぶり。
“マズイ”ルークは思った。ルークの全身から危険信号が発せられる。汗がどっと出た。
みんなを守るために、人がいないところへと走る。
棍棒が迫る直前でルークは回復薬を口に含む。
ブレイブを解放し、剣に炎をまとわせる。
“頼む。もってくれ”ルークは思った。
ルークは火炎剣を棍棒に打ち付ける。戦車に蚊が挑むようなものだった。ルークの攻撃もむなしく、吹っ飛ばされる。ピンボールのように体が跳ねる。ルークの全身に焼けつくような痛みが襲う。ルークは痛みをこらえて回復薬を嚥下する。
パメラのつくってくれた回復薬は上物だった。折れた骨をつなぎ、壊れた筋肉を回復してくれた。サイクロプスはまたも棍棒を振り上げる。狙いはルーク。
痛みで意識が覚醒する。アドレナリンが湧き出る。ルークは叫んだ。
「一つ目ヤロウ上等だ!かかってこいや」ルークは言った。
ルークは再び回復薬を口に含む。ただし、ルークの闘志は折れなくても剣はそうはいかなかった。ルークの剣は真っ二つに折れていた。
“畜生、剣がない”ルークは思った。
胸の奥のブレイブが点灯する。”ないなら作ればいい”ルークは思った。
折れた剣に無理やり魔力をつぎ込む。折れた剣先を炎で補填する。
ルークは思考を回転させる。
“イメージだ、折れない心、折れない剣。もっと熱くてもっと強い剣を”ルークは念じる。
サイクロプスは振りかぶって、3発目を振り下ろした。
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