第29話
ちょっと前ルークとサスケ
二人は言われた通り遠くの薬屋まで歩いていた。
ルークは思っていた疑問を口にする。
「なぁサスケ、なんだかカイザー様の様子おかしくなかったか?」ルークは言った。
「うん……。なんかうろたえていたね……。カイザー様って子ども苦手なのかな……」サスケは言った。
“そういう事じゃないんだよな……”ルークは思った。
ただ同時にそういう考え方をするサスケが好きだったりする。だから、別に訂正もしない。
サスケがおいしそうな料理にひきつけられるたびにルークは首根っこを引っ張る。
「サスケ、今僕たちは白狐を助けなきゃダメだろ」ルークは言った。
「そうだよね。でもカイザー様はどうしてわざわざ遠い薬屋を指定したんだろうね。まるで私たちを白狐から遠ざけるみたいに……」サスケは言った。
「たしかに、この道を通ればサスケが出店(でみせ)にひきつけられるのを見越していたみたいだよな」ルークは言った。半分ジョーク、半分本気だ。
同時に、またしてもショーウインドウをのぞき込んだサスケの首を引っ張る。
「そういえばサスケ、カイザー様からお金預かっていたよな。いくらくらいあるんだ?」ルークは言った。
サスケは懐から預かった金額を確認する。
「……めちゃくちゃいっぱい」サスケは言った。
ルークも隣からのぞき込む。
「ほんとだ。カイザー様薬屋ごと買い占めるつもりかな……」ルークは言った。
二人は薬屋についた。
その薬屋は街はずれにあった。『パメラの薬屋』というお店だった。
街中にある新しくて広い店舗とは違った。あばら家がギリギリ今日まで持ちこたえているようだった。ぼろ屋ではあったけど、ルークたちの村の薬屋と似ていて、好感が持てた。
サスケが店員を呼ぶ。
「ごめんくださーい」サスケは言った。
「はーい」
薬屋の奥から返事が聞こえた。どたばた走る音が聞こえてきた。現れたのは、二人と同じくらいの年齢の女性だった。
「『パメラの薬屋』へようこそー。わー半年ぶりくらいのお客さんだ!わたしパメラよろしくね」パメラは言った。
サスケが元気よく答える。
「初めまして私はサスケ、こっちはルーク。どうぞよろしく!今日は回復薬を買いに来たんですけど、どれくらいありますか?」サスケはいった。
「ちょっとおまちください。かぞえます。……中瓶サイズで10個くらいですかね」パメラは言った。
「あ。じゃあそれ全部ください」サスケは言った。
パメラが驚く。
「全部ですか?結構高いんですけど、大丈夫でしょうか?具体的にはこれくらい……」パメラは言った。
パメラは二人に金額を提示する。
サスケはルークに目配せする。“全然余裕”ルークは思った。
「買います」ルークは言った。
「ま。まいどあり!……ねぇもしかしてもっと回復薬つくったら買ってくれますか?」パメラは言った。
ルークとサスケは目を合わせる。
“まぁもらったお金まだまだだいぶあるし、いいんじゃないか?”ルークは思った。
ルークは答える。
「買うのは問題ないのですが、ただし僕ら時間がないので」ルークは言った。
パメラの目が輝く。ルークの鼻先に指を3本立てる。
「3分頂戴。この店にあるもの物色していたらすぐ時間すぎるから。すぐに用意するね」パメラは言った。
パメラはそういうと、調合セットを取りだした。
“いくら何でも3分で作れないだろ……”ルークは思った。
調合はかなり高度な魔法である。村では、ばっちゃが調合してくれた。ばっちゃは二日ほどかかって回復薬を作っていた。ばっちゃは正式な調合師ではないが、早い方だと思う。旅の薬屋がばっちゃの調合に驚いていたこともあったから。
“3分なんてちょっと無理じゃないか……”ルークは思った。
ルークの疑念をよそに、パメラは準備をする。
パメラは取りだした薬草をすりつぶすと、煮詰めていく。
そのときルークは時間の流れがおかしくなるのを感じていた。
サスケも気づいたらしい、ルークに耳打ちする。
「ねぇルーク、なんか変な感じじゃない?」サスケは言った。
ルークは答える。
「あぁ。なんか浮遊感?がある。ちょっとカイザー様の勇者の剣に似ているな」ルークは言った。
二人はパメラの動きに見とれていた。その手さばきに無駄は一切なく、目にもとまらぬ速度で回復薬が出来上がっていく。パメラは瓶を10個並べると、二人の感じていた浮遊感も消えた。パメラは息を吐いた。緊張の糸がとける。
パメラは二人をみた。。
「ジャスト3分、毎度あり」パメラは言った。
ルークとサスケは拍手をした。
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