第28話

カイザー宿屋


ルークとサスケが宿屋を出たことを確認するとカイザーはおもむろに立ち上がった。

扉に人よけの結界を張る。そして、ベッドの中の狐を見る。


「起きろ、ルシファー」カイザーは言った。

今まで寝ていた狐がにやりと笑う。

「カイザー様何ですか?人がせっかくかわいく寝ているのに」ルシファーは言った。

先ほどまでの弱っている姿と打って変わって、ルシファーは快活に笑った。


「何が目的だ?」カイザーは言った。

ルシファーは笑った。

「目的なんてないですよ、わたしはおなかが空いて盗みを働いた哀れな狐です」ルシファーはいった。ルシファーは変化をして、白狐に化ける。哀れっぽく鳴いた。


カイザーは溜め息をつく。

“ルシファーに目的など聞いてもしょうがないか、コイツは神に操られているだけだしな……”カイザーは思った。

「これからどうするんだ?」カイザーは言った。

ルシファーは人間の姿に戻る。

「何も考えていませんね……。しいて言うなら私が魔王様の旅路を華々しく演出させていただきますよ。いかがですか?」ルシファーは言った。

カイザーは即答する。

「いらない。お前は余計なことはするな」カイザーは言った。

ルシファーは話を聞かない。独り言をつぶやく。

「……そうだ。それがいい。なぜ気づかなかったんだ。魔王様が勇者をやるのであれば、わたしが手助けをしてあげればいいんだ。盛り上がるぞ。エキドナには任せられない、あいつは何にもわかっちゃいないからな。そうと決まれば即実行だ。魔王様必ずやお役に立ちましょう」ルシファーは言った。

“コイツはまずい”カイザーは思った。カイザーは勇者の剣に手をかけて気づく。

コイツを殺すことができない。ルシファーは堕天していても元々は天使だ。コイツには、勇者の剣が効かない。素体の能力が弱すぎる勇者カイザーでは肉弾戦も期待できない。そしてサスケとルークはこの狐に騙されている。

頼みの綱のエキドナは潜伏しているため、呼び出すこともできない。

“あれ?この堕天使もしかして天敵じゃないか?”カイザーは思った。


ルシファーもそのことに思い至った様子。ルシファーは笑う。

「ははは、カイザー様どうやらわたしを倒すすべがないようですね。大丈夫です大丈夫です。わたしはあなた様の味方です。“こうして”親身にサポートさせていただきますよ」ルシファーは言った。

“こうして”、カイザーはその言葉に嫌な予感がした。


ルシファーは言い終わると、手を鳴らした。

乾いた音が響く。暗雲が立ち込める。

カイザーはあわてて窓に近寄る。嫌な予感がする……。

カイザーは唾をのんだ。

音は伝搬して空を伝わり、空が割れた。



隙間から巨大な棍棒を持った、一つ目の巨人:サイクロプスが現れる。

カイザーは唖然とする。カイザーはルシファーを見るとルシファーも驚いていた。一拍おいてルシファーは笑いだす。

「ははは!カイザー様最高ですね。いきなり神話級のモンスターを引き当てるなんて……。素晴らしき運!わたしの『聖隷召喚』は何がくるか選べないんですよね。……それではわたしは手負いの狐をやるので、一緒に頑張りましょう。レッツ勇者!」ルシファーは言った。


ルシファーは言いたいだけ言うと、ベッドに寝ころんだ。少女の姿に戻る。

カイザーは頭を抱えた。

そこへ、サスケが飛び込んでくる。

「カイザー様大変です。化物が出てきました」サスケは言った。

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