第27話
ルーク 魚屋
「ご主人、ごめん逃げられちゃったよ」ルークは言った。
ルークは狐から取り返したウナギを差し出す。商品としてはだめかもしれない。
「いいよいいよ、ありがとな。そのウナギ良かったら持って帰ってくれよ。なんなら、こいつもおまけする」魚屋は言った。
魚屋はいくつかウナギを見繕って、手渡してくれた。
「あのかわいらしい嬢ちゃんにも礼を言っておいてくれよ。あのキツネ今度会ったらただじゃおかねぇ」魚屋は言った。
ルークはお礼を言って魚屋を後にした。
ルークは路地裏に入ると待っていたサスケに声をかける。
「お待たせ、魚屋さんウナギ沢山くれたよ」ルークは言った。
ルークはもらった袋を見せる。
サスケは抱えた銀狐を見る。狐は捕まえた後、かわいらしい女の子になった。
人間の変化(へんげ)か動物の変化か……。まだわからないが、サスケはその子を魚屋に引き渡すのを拒否した。
ルークだって、こんな子供を引き渡すようなことはしたくなかった。
「とりあえず、かえってカイザーさんに相談してみよう」ルークは言った。
ルークたちは待ち合わせの宿屋に向かった。
カイザーは入れ違いで部屋を出てしまったようだ。会うことはできなかった。
狐をベッドに寝かすと、ルークはウナギを水槽に入れた。
ウナギは意気揚々と水槽の中を泳ぎだした。
サスケは帰り道で一度も口を開かなかった。サスケはずっと狐を眺めていた。何かしら思うところがあるのかもしれない。
サスケにも親はいない。ルークは部屋を出た。
狐は衰弱していた。おなかが空いているのだろうか……。ルークは思った。もしかしたら何もたべていないのかもしれない。ルークは宿屋の主人におかゆを頼んだ。ルークが部屋に戻ると、サスケは狐の体をふいていた。
サスケが突然口を開いた。
「ねぇルーク。この子ね、たぶん元々は狐なんだと思う」サスケは言った。
サスケは狐の手袋をとって見せてくれた。変化がうまくいっていなくて、右手が狐の手のままだった。
「……そうか」ルークは言った。
元が狐だったとして、なぜこの子はいま人間モードになんだろう……。ルークは思った。普通であれば、意識がなくなれば元の姿に戻るはず。この子は意識を失ってなお、人間の姿をしている。
人間でいた時間が長かったのかな……。ルークは思った。
サスケが狐の顔にかかった髪の毛を払ってやる。
狐は静かに眠っている。
そこへノックの音が響く。
「失礼します、おかゆ持ってきましたー」宿屋のおっちゃんが言った。
おっちゃんは器用に片手で扉を開けると、近くのテーブルにおかゆを置いた。
このおかゆにはウナギが入っている。ルークが頼んでおいた。
蓋を開けるとおいしそうなにおいが部屋に充満した。狐が目をさました。
狐の口の端からよだれが垂れている。目をキラキラさせながら、おかゆの匂いを嗅ぐ。
ルークはベッドの近くまでおかゆを運んだ。
サスケが狐におかゆを食べさせている。ルークはサスケがうらやましそうにおかゆを見るのを見逃さなかった。
「サスケの分は別にあるからな」ルークは言った。
「ほんと!ありがとー!」サスケは言った。
狐は自分のご飯をぺろりと平らげるとまた眠りについてしまった。
サスケは自分の分を食べ始める。
「これおいしー!うなぎを食べられるなんて、旅に出てよかった……」サスケは言った。
“わかる”ルークは心から思った。
旅に出てからというもの、ルークはカイザーのつくる料理が待ち遠しくてたまらなかった。さらに、ウナギなんて高級食材を食べることができている。もしかしたらこれが旅に出て一番良かったことかもしれない。
村の中に居たらこんな経験は一生詰めなかっただろう。
そこへカイザーが帰ってきた。
「ただいま……」カイザーは言った。
「お帰りなさい」サスケは言った。ルークもカイザーに会釈する。
カイザーの動きが固まる。
ルークはカイザーが狐を見ているのに気が付いた。
“やっぱり勝手に狐を保護したのは問題だったか……”ルークは思った。
「カイザーさんすみません、この子弱っていたので保護しました。迷惑だったでしょうか……」ルークは言った。
カイザーからは返事がない。サスケが悲しい顔をする。
カイザーは物思いから立ち直ると、サスケに言った。
「いや、弱っているのなら保護するべきだ。なにも悪くない。ちなみに、回復薬は与えたか?」カイザーは言った。
カイザーの言葉にサスケの顔が明るくなる。ルークもカイザーから許されたようで安堵する。カイザーの質問に答える。
「いえ、まだ与えていません」ルークは言った。
カイザーはやけに明るく、わざとらしく言う。
「それはよくないな。街の北東の方に薬屋さんがあるのでそこで買ってきなさい。なるべく街のはずれのところがいい。絶対にいい。二人でちょっと行ってきなさい」カイザーは言った。
その言葉にルークは戸惑う。
「二人ですか……別に買い出しなら一人でもいいんじゃないでしょうか……」ルークは言った。
「いや、一人だと何かあるとまずいからな。是非二人で行きなさい。この狐の面倒は私がみよう」カイザーはいった。
ルークはカイザーの様子に多少違和感を覚えながらも従う。カイザーが狐の保護を許してくれて、嬉しかった。
「じゃあ、サスケ行こうか」ルークは言った。
サスケは狐に話しかける。
「ちょっと行ってくるから待っていてね」サスケは言った。
サスケは狐の髪をなでると、立ち上がった。
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