第22話
馬車の中
「エキドナちゃん。ついてきてくれてありがとね」サスケは言った。
「いえいえ、こっちの方が面白そうだったのでワクワクしますよ」エキドナは言った。
二人は、荷の中でひそひそ話をする。
ワクワクしたのはサスケも同じだった。カイザー様に忍び込む指示を受けた時、面白そうと思って飛び込んだ。でも、興奮が冷めればちょっと怖くなる。サスケはエキドナに話しかける。
「エキドナちゃんはカイザー様がなんでこの馬車に忍び込むように言ったかわかる?」サスケは言った。エキドナは答える。
「おそらく、この馬車に乗っているモノが魔物だからですよ」エキドナは言った。
サスケは驚く。
「魔物!」サスケは言った。
サスケは慌てて自分の口をふさぐ、荷車の外にいるプラダに聞かれてはマズイ。
“わたしのこういう迂闊なところがまだまだだよね“サスケは心の中で反省する。さいわい馬車の走行音でプラダには聞こえなかったらしい。プラダは鼻歌を歌っている。
サスケは再びひそひそ声でエキドナに話しかける。
「ねぇねぇエキドナちゃん、どんな魔物が載っているの?」サスケは言った。
「うーん、外からだとわからないんだけど、結構やばめなやつね。魔力が樽の隙間から蒸気みたいにこぼれているみたい」エキドナは言った。
エキドナの目には、ドライアイスのように揮発する魔力が見えていた。樽自体が封印となっているようだが、封が破れかけている。馬が転んだ時に封印がズレたのかもしれない。もしくは、わざと緩い封印にしてあるのか。エキドナは好奇心がむくむく出てきた。
“さて、だれがやったのか、なにをするつもりなのか。プラダはおそらく関係ない。いや、もしかして自身に洗脳魔法でもかけて欺いている可能性もあるわね”エキドナは思った。エキドナのなかでありとあらゆるシミュレーションが浮かぶ。
サスケも村を出て、一番初めの冒険にワクワクがとまらなかった。ドキドキしながら樽を見る。
外から声が聞こえる。街についたようだ。門番の検閲が入るらしい、サスケは猫のように荷車の外にとびだした。サスケは視線感知に優れている、他人の目から自分を見ることができるのだ。周囲に自分を見ているモノがいないタイミングを見計らって馬車が見える位置を移動する。肩にはエキドナがいて、魔力や他の物を感知してくれていた。
“さて、あの荷物を気にしながらもこの街の情報収集をしないと”サスケは思った。サスケは音もたてずに壁を上った。
“サスケちゃん、やるわね”エキドナは思った。
身のこなしが軽いだけではなく、間の取り方がうまい。人の意識の隙間に入り込むのがうまいのか、ここまでで誰にも気づかれていない。エキドナはサスケにこっそりスニークの魔法をかけていたが、それも解除する。
エキドナの前で突然、サスケの瞳がうつろになる。サスケはどうやら他人の視界を感知しているようだ。おそらく、樽の中身を検閲している門番の視界を見ているのだろう。エキドナが馬車を確認すると、馬車は門を通過していた。“街の中に魔物が入るのもスルーってことは、何者かが手引きしているのかしら……”エキドナは考える。
分からないことが魔女にとっての喜びだった。わからないことを知りたい、好奇心を刺激される。この感覚を促進してくれるのは人間だった。人間は本当に面白い、エキドナはにやりと笑った。
「あ、なんかやばそう」サスケは言った。
エキドナもなにか魔法が飛来するのを感じていた。
あわててエキドナはカイザーとのパスをつなぐ。
サスケは影の中に潜った。
次の瞬間、サスケがいた場所が爆裂した。
タッチの差でサスケは難を逃れた。
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