第14話

カイザー廃城


カイザーはエキドナの反応が消えたことを察知した。


“何かのメッセージか?エキドナが簡単にやられるとは思わないが……”カイザーは思った。

戦闘では、カイザーは何もすることはなかった。

戦いのほとんどはルークが行った。


敵が現れたら勇者の剣を地面に刺す。

剣が影響を与える範囲はかなり広いことが分かった。だいたい剣が肉眼で見える範囲くらい。ステータスに自信がなかったカイザーにとって、こういう戦い方は助かっていた。カイザーの能力に合わせて、剣が変化してくれたのかもしれない。



いくつか勇者の剣についてわかってきたことがある。

1つ目は、自分の体の一部が触れている必要があること。

右手でも左手でもどちらでも構わないし、剣を背もたれにして座っていても大丈夫。

とにかく、剣は戦闘が終わるまでそこから引き抜くことはできないし離れることもできない。

2つ目は、剣が見える範囲にいる間だけ味方をパワーアップできることだ。

距離ではなく、視認できるかどうかが大事だった。曲がり角で使ってしまうと、角を曲がったルークのパワーはもとに戻った。

つまり、狭いところや見通しが悪いところで使うのは危険だという事だ。

3つ目は、傷も回復するという事。ルークが敵から受けた傷も、ゆっくり回復していた。

こうなってくると、いろいろ試したいことがあった。即死状態から生き返ることはできるのか?毒や麻痺、ステータス異常などはどの程度効果があるのか。

まぁルークを殺すわけにはいかないから、実験はしないでおこう。

そして最後に、カイザーが死ねば勇者の剣は解除される。

これは元々知っていた。

数々の勇者が命を落としたが、勇者の剣は勇者が死んだ時点でニュートラルに戻る。

これはカイザー自身何回も確認していた。

勇者が絶命したと同時に、剣はただの剣になる。


ルークは目覚ましい成長を遂げていた。

スケルトン程度なら苦戦もせずにもう倒せる。

もともとあった才能が伸びているようだ。この成長の速さも勇者の剣の恩恵かもしれない。


ルークとカイザーは休憩をとっていた。

焚き火を起こす。

「カイザー様、ここのボスの姿が見えませんね」ルークは言った。

「あぁおそらく地下だろう」カイザーは言った。

「わかるんですか?」ルークは言った。

ルークは驚いていた。カイザーは説明する。

「エキドナが地下で何かを見つけたらしい。そこでエキドナの発信は途切れた。おそらくなにかがあるんだろう」カイザーは言った。

「エキドナさん大丈夫ですか?」ルークは言った。

ルークはエキドナが魔女であることを知らない。弱い妖精だと思っている。

「エキドナは大丈夫だ、殺しても死なないから」カイザーは言った。

ルークはゴキブリをイメージした。妖精とは相いれないが、エキドナさんにはそういったしぶとさのイメージがしっくり来た。

「たしかに、なんとなくわかりました」ルークは言った。

ルークはカイザーが作ってくれたスープを食べる。

ルークはカイザーの料理スキルに驚いていた。

カイザーが作る料理はどれもおいしいのだ。スープは香辛料や香草からだしを取り、干し肉やキノコを混ぜて作られていた。

カイザーが言うには、勇者イサナのキャンプ能力にあこがれて練習したらしい。

“さもありなん“ルークは思った。


カイザーはルークに話しかけた。

「なぁルークくん、どうしてサスケは村から出られないのか教えてもらえるか?わたしの剣の能力が判明した以上、仲間が必要だ」カイザーは言った。

カイザーの剣の能力が何人にまで影響を与えるかはわからない。ただし、カイザーが戦えない向きの能力ではないため、仲間を増やすのがコスパがよさそうだった。

ルークはためらったが、口を開いた。

「サスケは孤児です。ある日ベルウッド村に来ました。親とか家族とかについて聞いてもなんにも答えない。答えられるのは自分の名前の“猿飛サスケ”だけでした。言動や身なりから判断するに、山の中で育ったようです。最初は言葉もあんまり通じなかった。その子をみんなで育てました。村のみんながそれぞれ住む場所とか、食べるものとか、そういうものを提供して。だからあいつは村の子どもです」ルークは言った。

「村の子どもだからみんなに遠慮して、外に出られないという事か?」カイザーは言った。

ルークは首を振った。

「あいつは待っているんです。自分の親を。いつか自分の本当の両親が探しに来てくれるのを心の奥でずっと待っているんですよ。僕らはどこまで行っても家族“みたい”なものなんです。サスケの家族にはなってやることはできない」ルークは言った。

悔しそうにルークは唇をかんだ。

カイザーは疑問を口にする。

「家族ならルークがなってやればいい」カイザーはいった。

「だから、それは無理なんですよ。俺たち村の衆は本当の家族になれるように努力してきました」ルークはいった。珍しくいらだっているようだった。

カイザーは自分の意図が伝わっていないようなのでもう一度繰り返す。

「いや、結婚すれば家族になれるんだろ。だから、ルークがサスケと結婚すれば家族だろう。親でも兄弟でないかもしれないが……」カイザーはいった。

1+1=2だよね。カイザーにとってはその程度の考えだった。パンが無ければケーキを食べればいい。そういうつもりで言った。


ルークは豆鉄砲を受けたハトのように口をパクパクした。顔は真っ赤になり、キジバトよりもキジに近かった。

生まれたてのキジのように、うまくさえずれないのかもしれない。なにか深く考えこんでいたかと思うと“分かりました”突然そう言って立ち上がった。

「僕がサスケを幸せにします」ルークは言った。

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