第4話
深夜になった。
監視してた4人が銃を持って庭に音も無く侵入した。
これは訓練された動きだ。
僕もその後ろに音も無く忍び寄る。
『美学その7
恩には恩を仇には仇を、悪党には悪党を』
どこの誰だか知らないけど、やられる前にやるのは悪党の鉄則。
魔力で2本のナイフを生成して後ろの2人の後頭部に突き刺してから、残りの2人に声をかけた。
「なにかご用?」
驚いて振り向いた2人の胸ぐら掴んで思いきり遠くに投げ飛ばす。
その後2つの死体も投げ飛ばして、僕も飛んで行って遥か遠くにある海のど真ん中に落ちた4人を見下ろした。
流石と言うべきか、生きてる2人は直ぐに沈む装備を外して必死に泳いでいる。
だけど僕はリボルバーを生成して魔力の弾を込めた。
「ここなら死体も残らないね」
僕は2人にヘッドショットを決める。
4人の死体は海の底へと沈んで行った。
◇
翌朝。
姉さんとピュラーは一緒に大学に向かった。
僕も空から見守る事にした。
丁度土曜日で良かったよ。
大学で無事にピュラーと八尾木を引き合わせた姉さんは、1限目だけ講義があるから講義に行った。
じゃあもう用は無いや。
姉さんの様子見に行こうっと。
「パンドラの箱を――」
ん?パンドラの箱って言った?
本当だ、ピュラーがパンドラの箱を八尾木に見せてる。
つまりピュラーがパンドラの箱盗んだって事?
なんだよ、こいつも悪党じゃん。
姉さんにバレないよ内に始末しないと。
なんかピュラーが言うには、ピュラーはパンドラの箱を守る一族の末裔で、遺跡から盗まれたパンドラの箱を開けられる前に取り返したらしい。
けど、その時に父親は殺されたんだって。
ギリシャ政府の中にも敵がいるらしく、遠路遥々父親の友人だった八尾木に助けを求めて来たんだって。
ちなみにパンドラの箱を開けると世界が滅びるらしい。
一体何が入ってるんだろう?
そんな事言われたら誰だって気になっちゃうよね。
だから八尾木と一緒にアメリカに逃げるんだって。
そこには頼りになる友人がいるみたい。
出発は明日の夕方。
って今すぐ行けよ。
のんびりしてるな〜
そうこうしてる内に姉さんが戻って来た。
「そうなのね。
じゃあ今日は観光しましょう」
話を聞いた姉さんがそう言った。
「え?」
え?
僕もビックリ。
もう八尾木に任せて放っておこうよ。
「いいじゃない。
私が案内するわ。
そうだ、夢路も呼びましょ」
姉さんがスマホを取り出した。
僕は慌てて遠くに移動したら、すぐにスマホが鳴った。
「はいはーい」
「夢路。
今からピュラーに日本案内するのだけど手伝ってくれる?」
「いーよ」
「じゃあ駅前集合ね」
「はーい」
仕方ない。
姉さんのお願いは断れない。
◇
ピュラーは最初遠慮しがちだったけど、1時間もしたらすっかり姉さんと楽しくお喋りしていた。
やっぱり姉さんは凄いや。
そして僕は超美人の姉さんとおまけにギリシャ美人のピュラーを連れてる優越感に浸っていた。
ほらほらいいだろう。
街ゆく男達の視線は2人に釘付け。
姉さんがわざわざ僕を呼んだのはナンパ防止の為だね。
中には物騒な視線も混じっているけど。
昨日のお仲間みたいだ。
尾行慣れしている。
人混みだから様子見って所かな?
あっちもあまり騒ぎにはしたく無いみたい。
それならそれでいい。
姉さんに危害加え無いなら、ピュラーどうなろうが知った事では無い。
楽しい時間ってあっという間に終わる。
夕暮れ時かなり人が疎になって来た。
そんな中、僕達に後ろから近づいてくる男が1人。
どうやら動き出したみたいだ。
「ピュラー。
やっと見つけたよ」
僕達は一斉に振り向く。
鍛え抜かれた体が服の上からでも分かる大柄な男だ。
ピュラーの顔が強張る。
「あなたは誰ですか?」
姉さんが物怖じせずに強い口調で尋ねた。
「私はピュラーの兄です。
昼過ぎに入国してから探していたんです。
さあ、ホテルも取ってあるし帰ろう」
「今からピュラーとディナーに行くつもりなのですが」
「それは失礼しました。
では、お世話になってばかりでは申し訳無いのでディナー代は出させて下さい」
そう言って男はピュラーにお金と何かメモを渡した。
「そこに今夜のホテルを書いているからディナーの後おいで」
男はすんなりと立ち去った。
ピュラーはメモを見てすぐに僕達に見えないようにポッケに入れた。
僕はしっかりと覗き見させてもらった。
『夕食が終わったら下の住所に1人で来い。
来なけれその姉弟がどうなるか分かっているな』
夕食終わるまで待ってくれるとか、いい人だね。
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