第2話

翌朝、朝刊の一面は僕の事が一面を飾った。


『怪盗ナイトメア!

またもや予告状通り完遂!

夜空に消える!』


残念ながら写真はブレブレだけどね。

そう簡単には撮らせないよ。


『――尚、ナイトメアが残して行った裏帳簿から脱税が発覚。

そのまま逮捕に至った。

もしかしたらナイトメアの目的はこれだったのかも知れない』


無い無い無い。


なんで僕がそんなめんどくさい事しないといけないんだよ。


偶々現金と一緒の所に隠していたからついでに警察官の前に落として行っただけ。


だって僕いらないもん。

あんなのただのゴミだね。


夢路ゆめじ

早く朝ごはん食べないと遅刻するわよ」


「はーい」


僕は新聞を置いて義姉さんが作った朝食を食べる。


義姉さんの料理はいつも美味しい。


僕の両親は2人共刑事だったけどとっくの昔に死んでいる。


だから僕の両親が残してくれたのはこの夢路って名前だけ。


親戚の誰にも引き取って貰えなかった僕は、父の親友だった検察官の今の義父に引き取られたんだ。


ちなみに義母は弁護士で義姉さんは警察官を目指して絶賛大学で勉強中。


みんな僕の事を本当の家族のように扱ってくれるいい人達。


そんな戦隊ヒーローもビックリな正義の味方集団だけど、僕は上手くやってると思う。


義両親が早くから仕事の時はこうやって義姉さんが朝食を作ってくれるんだ。


「私はもう行くから、ちゃんと戸締りして出てね」


「はーい。

いってらっしゃい義姉さん」


「夢路」


義姉さんが急に怖い顔で睨む。


「義をつけるのは辞めなさいといつも言ってるでしょ。

私は正真正銘あなたのお姉さんなんだから」


全く同じ発音なのに姉さんは僕が義をつけた事を言い当てて怒る。

僕の言葉が文字にして見えるのだろうか?


「わかったよ姉さん」


「うん、よろしい。

じゃあ、いって来ます」


姉さんはまたいつもの優しい笑顔に戻ってから大学にむかった。


さて、僕もそろそろ中学校に行く準備しますか。


中学校はつまらない。

でも、義家族に迷惑かけない為に義務教育だけは行く事に決めている。


あと2年で卒業だからそれまでの我慢。

卒業したら家を出て一人暮らしするんだ。


そうしたら自由だからね。

それまでの準備期間と思ってのらりくらりと過ごしている。


僕がテレビを消そうとした時、ニュースで外国の映像が流れた。


『先日ギリシャの遺跡で発見されたパンドラの箱が3日前に盗まれていた事が発表されました。

ギリシャ政府によると手がかりは全く無いとの事です。

これも怪盗ナイトメアの仕業では無いかと言われています』


それは僕じゃないね。

僕ならちゃんと予告状を出している。


パンドラの箱って言ったらあれだね。

とても綺麗な草木のレリーフが施されている箱。


『美学その5

素晴らしい物には惜しみない賞賛を』


この世界には素晴らしい物が沢山ある。


素晴らしい物には素直に素晴らしい褒める。

そうすれば人生に彩りが出来るってものだ。


そしてあの箱はテレビで一目見た瞬間素晴らしいと思ったよ。


遥か昔にあれだけ細かいレリーフを彫れる人が居たって事だよね。


凄い技術力だ。


出土した時に僕は実物が見たくてギリシャまで見に行ったぐらい。


しかもその箱はなんと開かないんだって。


仕掛けがあるのか?

はたまた鍵がいるのか?

それすらわからない。


中身は何かしら入ってるのは間違い無いらしい。

それを賢い人達が頑張って調べてるみたい。


あの箱欲しかったんだ。


中身はどうでもいいから箱開くまで待ってたの。


よし、なんか僕が奪った事になってるみたいだし本当に奪いに行こう。

放課後に。

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