第4話 いろんなスープ
家族みんながお休みの日、いとちゃん、お母さん、お父さん、妹のみずちゃんの4人で、ランチへ出掛けることになりました。近所に新しくできた、スープ屋さんに行くのです。
少し前に、家のポストにそのお店のチラシが入っていて、オープンすることを知ったのです。「巣ープ」と言うらしいそのお店は、いろんな種類のスープを食べることができるそうで、とってもわくわくします。
88森は木々の葉っぱがほとんど地面に落ちて、色とりどりの美しい絨毯を広げています。最近、いとちゃんはほっぺに触れる風が「そよそよ」から「ひやひや」になりそうな感じがしてきた事に気づいていました。
いとちゃんは、ワンピースの上にお気に入りの赤い上着を着ました。おばあちゃんが7歳の誕生日にプレゼントしてくれた上着です。ボタンを四つはめたら、グレーのうさぎ型のポシェットを肩にかけました。中にはハンカチ1枚とビー玉が2、3個。マーブル模様のビー玉は、去年の夏祭りにビー玉すくいをした時のもので、宝物なのです。妹のみずちゃんは、お父さんに上着を着せてもらっています。いとちゃんが赤ちゃんの時に着ていた、お下がりの緑色の上着です。みんなの支度ができたら、いざ出発!
外は気持ちの良い光がキラキラと輝いています。空気はちょっぴり透き通っています。暖かいスープを飲むのに、ぴったりな日に違いありません。落ち葉の絨毯をサクッ、サクッと踏みながら4人で歩いていきます。途中で、みずちゃんが道端に咲いている小さな花を見つけて、1つだけ摘んでいました。
地面が土から石畳に変わった所に花壇があり、美しいパンジーが咲いています。黄色、薄ピンク、紫、青、目のような模様のあるもの、ないもの…。こちらを向いて喋りかけてくるような感じがして、パンジーはいとちゃんの大好きなお花なのです。
「みずちゃん、そのお花は取っちゃダメよ」
お母さんがやんわりと伝えています。
花壇を通り越して開けた所に、「巣ープ」がありました。とってもお洒落な雰囲気のお店で、テラス席もあります。お昼前ですが、すでに何組かのお客さんが食事をしています。いとちゃん達も、お店の入り口に並びました。先に注文とお会計をするようです。カウンター前にレジ係のお姉さんがいて、メニュー表を渡してくれました。メニューはいとちゃんも読めるような字で書かれていて、スープの写真もいくつありました。
・ハエスープ
・ちょうちょスープ
・アリスープ
・アブラムシスープ
・カメムシスープ
・カエルスープ
・ねずみスープ などなど…
予想通り、たくさんの種類のスープがありました。大きいサイズと小さいサイズが選べるようです。
「わたし、ハエスープにするっ」
いとちゃんはハエスープの小さいサイズ、お父さんはねずみスープの大きいサイズ、お母さんとみずちゃんはちょうちょスープの大きいサイズを分け合いっこすることになりました。注文とお会計が終わったら、テラス席でスープが来るのを待つことにしました。風は少しひんやりしているものの、明るいオレンジ色の太陽の光がテーブルや椅子の上を暖めています。
「お待たせしました〜」
お店の人が、トレーに載せた3種類のスープとスプーン、みずちゃん用の取皿を持ってきてくれました。ハエスープは淡いグリーン、ねずみスープは青みがかった深みのあるグレー、ちょうちょスープは綺麗な桜色をしています。見た目にも美しいスープに、みんな感激しました。
「おいしい!」
一口食べると、甘味のある優しい味が口の中に広がりました。
「巣ープ」は、いとちゃんのお気に入りのお店になりました。
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