第2話「えりりん☆になりたい!」
「思い返せば、
輪廻眼アタルから “死“ の宣告を受けた あいは、生まれて初めて、これまでの生き方に疑問を抱いた。
あいは、本棚から、ドストエフスキーの『罪と罰』の後ろに隠した、女子高生やディープなドルオタの間で大人気のアイドルグループ “夢きゅん☆どりいむ” のセンターである“えりりん”こと“
純白のレース生地のワンピースを身に纏って、秋田犬と一緒に砂浜を裸足で走る“えりりん”の天使のような笑顔を見て、
「ああーーー、尊い!!」
という言葉が無意識に漏れていた。
艶めいた金髪のボブヘアに、透き通るようなコバルトブルーの瞳がフランス人形のような彼女の色白の肌によく似合っており、少女のようなあどけなさを残した面立ちは、あいに強い憧憬の念を抱かせた。
「ああーーー、
今でしょーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
“死” を覚悟した、あいは、今までに経験したことがない激情にかられた。
あいは、早速、スマホのアプリ“
「千金楽様、いかがでしょうか?」
あいの担当のカリスマ美容師 “GOLD” こと”
あいは、歓喜の涙を流した。
その足で、あいは、マツエクサロンに行き睫毛を盛り、コバルトブルー色のカラーコンタクトを買って帰宅した。
容姿端麗、品行方正、頭脳明晰……
“千金楽商事”の名に相応わしい愛娘が突然ギャルに変貌した様を見た両親は驚きのあまり卒倒し、兄は、
「これはこれで、カワユスなあ」と言いながらふへへとニヤついていた。
*
翌日、ウキウキしながら登校すると、皆、あいの変貌ぶりにざわめいた。
あいが通う“
あいは、学院長と理事長から直々に呼び出しをくらった。
「千金楽さん、一体全体、どうしてしまったヅラ?」
ヅラ疑惑が濃厚な学院長は、恐る恐るあいに問い掛けた。
「
「あー、ちょっと、
「はい。重々承知しております。
理事長が学院長の耳元でゴニョゴニョと囁いた。
「えっ? “千金楽商事“ からの我が校への寄付金額? えっ、ちょっ、マジヅラか? ふんふん……”千金楽商事“のご令嬢を退学処分すると……ひょっ、ひょえー! それはマズイヅラね」
学院長は驚きのあまり、所定の位置からずれてしまったヅラを、さり気なく戻しながら、
「今回の件ね、理事長と話し合った結果、特例中の特例としてお咎めなしといたすヅラね。今までどおり、勉学の方には勤しんで欲しいヅラね」
と言った。
「学院長様、理事長様、
こうして、あいは、財力と権力とで、無事難局を乗り切ることに成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます