爆走☆パツキンガール!

喜島 塔

第1話「あー、アンタ、死ぬね」

「あー、あれだね……アンタ、死ぬね」


 金色の刺繍が施された黒のフェイスベール、アラブの踊り子のようなセクシーな黒の衣装で身を固めた、齢80歳(自称56億7千歳)の売れっ子占い師“輪廻眼アタルりんねがんあたる”が発した衝撃的な言葉に、千金楽あいちぎらあいは耳を疑った。


「えっ? それって……人はいつか必ず死ぬとか……そういった意味ですよ、ね?」


「否、違う! わらわの輪廻眼りんねがんは生きとし生けるものすべての生き物の未来を見ることができるのじゃ。これは“占い”ではない! わらわは“輪廻神りんねしん”様に選ばれし者。わらわは、“輪廻神”様が仰ったことを、そのまま、其方に伝えたまでじゃ」


 あいの大きな瞳から、涙が溢れ出た。


「それで……“輪廻神“様は、私がいつ死ぬと仰っているのですか?」


「待たれよ……“輪廻神”様が何かをわらわに告げようとしておる……」


 そう言うと、輪廻眼アタルは、透明の水晶玉に皺々の両手をかざし、


「マダラカグラサスケ、マダラカグラサスケ……輪廻神様……わらわにこの者の未来を見せてたもれ……破―――――――――――!!」

 と呪文のような言葉を詠唱すると、

「えいやっ!!」

 と叫び、水晶玉をカチ割った。


 輪廻眼アタルは、息を切らしながら、あいに伝えた。


「其方の命日は3ヶ月後の◯月×日じゃ……残念ながら、“輪廻神”様のお告げはここまでじゃ」

「そうですか……わかりました。輪廻眼アタル様、仰りにくいことを正直に教えてくださりありがとうございます。残された時間、私、千金楽あいは、悔いの残らぬよう懸命に生きとうございます」


「うむ。さすがは、“千金楽商事ちぎらしょうじ“ 社長のご令嬢。肝が据わっておる」


「ええ。わたくしは、“千金楽商事ちぎらしょうじ”の息女として、幼い頃から厳しい教育を受けて参りました。薔薇の運命さだめに生まれし者として、華やかに激しく、そして気高く咲き、美しく散れと言われて、この17年間を生きてまいりました」


「其方は、まさに、一輪の凛とした薔薇の花のようじゃ……ところで、わらわって、最近テレビのバラエティー番組とかにも出てる今いちばん旬な占い師じゃない? 売れっ子じゃない? わらわに占って欲しい人って余裕で1年待ちとかしてるじゃない? そんなこんなで、わらわの占い料金1分1万円なのね……ていうわけで、今日の御代、30万円になるんだけど、よろしいかね?」


「もちろんですわ! じいや! 輪廻眼様に御代をお支払いしてさしあげて」


 あいの傍に待機していた、黒スーツに白手袋、銀髪の老執事は、涙をハンケチでそっと拭いながら、


「かしこまりました。お嬢様」

 と言って、スマートに支払いを済ませた。

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