第2話:巻き込まれ召喚
私は、自分で言うのもなんだが、数多の神々を一度に相手しても余裕で勝てる程強かった。だが、それも過去の話。とある女神の策略に嵌められて、失脚。うん、何度考えてもその時の私は無様としか言いようの無い有様だった。
まぁ無様だったとか、そういうのは置いといて。最も重要な問題は、その際に私の力が八割程、様々な世界に記憶と共に塊となって飛び散り、そのうち幾つかは敵側である女神に奪われているらしいという、この始末をどうするかだ。まぁ、女神が持ち去ってしまった分というのは、上
ぼんやりとそんなことを考えながら私は一人、自宅である孤児院の
まったく、今日は部活が早く終わる日だったもんだから、のんびりと午後を過ごそうかと思っていたのに。先日自室でのんびりとしていたら、急に訪ねてきた彼に、真剣なトーンでそんなことを言われてしまったのだ。仕方なしに、絶対に必要な腕輪二つとネックレス、そしてカラーコンタクト関連品──私は目の色が少々おかしいため、普段は黒いカラーコンタクトで隠しているのだ──を持ってきた。
約束の時間まで十分程余裕を持たせられるよう計算して孤児院を出たつもりだったが、それにしては早く来すぎたようだ。その証拠に大和はまだ、来ていない。しかし、なんだかイヤな予感がする。自慢ではないのだが、私の予感、と言うのはよく当たるのだ。…今回は嫌な方の予感なので、当たってほしくないが。
「ごめん、待たせたみたいだね」
さぁ、ようやく大和がやってきた様だ。学校で用事を終わらせたあと、結構本気で走ってきたのだろうか。そこそこ息が切れているようだが、しかし私には関係ない。容赦なく私は会話を進めてやる。
「いや、そんな事はないけど…私が早く着いてしまっただけ。そんなことよりもさっさと本題に入るよ。『重要』、なんでしょ?」
「あぁ、とても『重要』な話だね。…しかし星奈を騙すかのような行動は胸が痛むけれど」
乱れた息を整えて、大和が答える。しかし後半がうまく聞き取れなかった。私が、なんだって?
「?…ごめん、もう一度言ってくれない?後半が聞き取れなくて」
夕日が沈みきる寸前。
「ごめん、星奈。小言は、後で聞くから。」
私と彼とで全く話が噛み合ってない。彼はとうとう頭おかしくなってしまったのか、とか呑気に考えていると、夕日からの光があり得ないほどに眩しくなっているのに気付いた。この眩しさはおかしくないか?と思い、辺り一帯を超能力で探ってみて、納得した。どこかの世界からの転移魔法がこの場に届いている。
大和はこうなることを知っていて、私をここに呼んだんだろう。これが周囲に居る人間も巻き込むタイプの転移魔法だと知っていて。はぁ…これはしてやられたな。
力を二割ほどしか出せないとしても、気付いてもおかしくなかった筈だ。だが気付けなかった。
想定外の出来事に身動きがとれない私との距離を、容易く詰めた大和の足元を中心として、廃墟の床一帯に大きな円状の緻密な紋様が光り、浮き出る。
キンと、とても高く耳を刺すような音があちこちから響くように聞こえて、私は思わず手で耳を塞いでいた。遅れてやってくる閃光に耐えきれず、目を瞑る。どれ程そうしていたのか、分からなくなった。そして、耳鳴りが落ち着きはじめた頃、瞼の裏に強い光を感じなくなったから、恐る恐る目を開けて、耳に手を当てていたのもやめる。と、予想通り閃光は収まっていた。………が。
「………はぁ。本当に最悪だ。」
目の前に広がっていたのは、廃墟の薄汚れた壁ではなく、─────明らかに日本では見かけない豪奢な服を着た、顔色の悪い、沢山の人だかりだった。……大和はあんなに素早く動けたのか、と私は現実逃避をしていた。そうでもしていないと、倒れてしまいそうだと思ったから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます