番外編2:セクハラの行方③




「あの頃……セリーヌがステファンと婚約解消して僕と婚約した頃、セリーヌはあまり感情を出せなかっただろう?」



「……ええ」



 その頃のセリーヌはステファンとの婚約に疲れ切っていて心が折れていた。またルーカスがどうして婚約してくれたかも分からずに戸惑いも大きかった。



「ああやってエスコートを失敗したふりしたらセリーヌが怒って……、それが嬉しかったんだ」



「へ?」



「セリーヌが僕に感情を見せてくれていると思って嬉しかった……子どもと同じだよ。好きな子にちょっかい掛けて、自分を見てくれたって喜ぶんだ。僕はセリーヌが笑ってくれたら一番嬉しいけど、怒ったり、今みたいに泣いたりしても嬉しい。だってその顔は僕しか見られないだろう?」



「う……」


 そう言われてしまえばセリーヌは怒るに怒れなくなる。本当に狡い人だと眉を寄せれば、ルーカスは可笑しそうに笑った。



「勿論、セリーヌのお尻に触りたい気持ちだってあったよ」



「な……っ!」



「当たり前だろう?十年以上片思いしていた相手が婚約者になったんだ。触れたくて触れたくて堪らない。寧ろお尻を触るくらいで我慢していたのを褒めて欲しいな」



 口をぱくぱくさせているセリーヌの額へルーカスは愛おしそうに口付けた。セリーヌはルーカスを睨み付け、声を上げた。



「お尻を触るなんてセクハラです!今後は許しませんからね!」



「セリーヌ、何言ってるの?」



 きょとんとした顔でルーカスは尋ねる。



「もうあと数日で夫婦になるんだよ?ずっと我慢していたけど漸くセリーヌを隈なく触れることができるんだ」



 背中に回されていた手が不自然に動き回り、そして目的の場所に到達する。






「殿下!!そっちはお尻です!!」



 セリーヌの叫び声を聞いてルーカスは満足そうに笑っていた。ああ、きっとまた彼を許してしまうのだろうと、セリーヌは不満そうに身を捩るのだった。










<番外編2:セクハラの行方 完>



 こちらで以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました!


 このお話はお馬鹿なタイトルの割に、内容はシリアスになったり、急にお馬鹿になったりと高低差ありすぎて耳キーンなお話でしたが書いていてとても楽しかったです。読んで下さった方がくすりと笑って下さっていたら嬉しいです!

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殿下!!そっちはお尻です!! たまこ @tamako25

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