番外編1:護衛たちの内緒話
結婚準備に追われるルーカスとセリーヌが短い合間を縫って、束の間の二人の時間を楽しんでいる。少し離れた場所で見守る護衛達は今日もおしゃべりに忙しい。
「無事結婚が決まって良かったよな~」
「もしもセリーヌ様がステファン殿下を選んだりしたら……っ」
「ひぃっ!!」
「国家滅亡の危機……」
「「「セリーヌ様がルーカス様を選んでくださって良かった~!!」」」
「それにセリーヌ様のおかげで俺達の命も無事だったんだぜ」
「ああ」
その場にいる全員が大きく頷いた。
ステファンがセリーヌの暮らす公爵邸に乗り込んできた時のことだ。ルーカスからセリーヌの警護を命じられていた護衛達だが、流石に王族のステファンを追い出すことは出来なかった。その為、ルーカスは護衛達へ厳しい処分を言い渡そうとしていた。
それを止めたのがセリーヌだ。ステファンに会うことは自分が決めたこと、護衛達は必死でステファンを止めてくれていたことをルーカスに説明し、彼らの処分は無しにして欲しいと願った。ルーカスは相当複雑そうな顔をしていたが、セリーヌのお願いは無下には出来ず護衛達は御咎めなしとなった。
それどころか、セリーヌは自分の判断のせいで護衛達に迷惑を掛けてしまったと謝り何か自分に出来ることは無いか聞いてくれた。通常であれば辞退する提案だ……だが。
「セリーヌ様が公爵家の侍女たちを紹介してくれて滅茶苦茶ラッキーだったよなぁ」
「王子妃になる方に”侍女を紹介してほしい”なんて俺達しか言わねーよな」
「ダミアン様、後から聞いて頭抱えてたもんな」
セリーヌは彼らの願いを笑顔で聞き入れ、公爵家の侍女たちに声を掛けた。勿論彼女たちの意思を優先するつもりだったが、第一王子の護衛であり、次期国王の護衛を約束されている彼らは人気が高かった。次々とカップルが生まれ、侍女たちの幸せそうな顔を見てセリーヌまで笑顔を零した。
「彼女を紹介してくれて良かった……本当に良かった」
「ああ。今、彼女がいなかったらと思うとな」
「セリーヌ様には感謝しかないな」
「彼女がいなかったら耐えられないぜ……」
そう、護衛達は第一王子の護衛ではなく次期国王の護衛となる。そのため、今までは許されてきた乱雑な言葉も態度も改める必要があった。そして、護衛の技術や体力だってこれまで以上の物が求められる。
彼らはこれまでののんびりした毎日が終わり、礼節とマナーの講義、そして今までよりずっと厳しい鍛錬をこなす日々となった。
「……可愛い彼女がいなかったら逃げ出してたかも」
「俺、立派な護衛になって彼女にプロポーズするんだ」
「お前、それすぐ死ぬやつ……」
ぎゃあぎゃあと喚く彼らに、更に講義を追加しようと黒い笑みを浮かべるダミアンが近付いていた。
<番外編1:完>
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