第51話


 隣に立つルーカスの手に触れると、優しく微笑み握り返される。手を繋ぐことなんて何度もしているのに未だに彼に触れる度、鼓動が早くなってしまう。



「それより、私の方こそずっとお聞きしたかったことがあるのですが」



「何だい?」



「ルーカス様はどうして呪いを受けていた間も、私だけ見えていたのでしょうか?」



 ルーカスのプロポーズを受けた後、セリーヌはもう一度ルーカスの祖父が集めたと言う魔女の呪いに関する報告書を読んだ。だが盲目の呪いを受けているにも関わらず誰か一人だけは見えている事例は一つも見当たらなかった。



「魔女に聞いてみないと本当の理由は分からないけどね。でも、何となく見当はついているよ」



「え!」



 目を見開くセリーヌへもう一度微笑む。あの報告書では、魔女に何らかの危害を加えた者たちが呪いを受けていた。危害を加えた者の代わりに呪いを受けたのはルーカスだけ。だから慈悲が与えられたのだろう、とルーカスは思う。慈悲を与えたのは、魔女なのか神なのかはルーカスには分からない。祖父の代わりに呪いを受けた哀れなルーカスへ、セリーヌという愛する者の姿が見える希望が与えられたのだ。




「……いつか教えるよ」



「今、聞きたいです」



 愛する者の姿だけが見える希望、なんて少し気障に思えてセリーヌに伝えるには気恥ずかしい。ルーカスは甘い瞳でセリーヌを見つめてから抱き寄せると耳元で囁いた。




「これから先、ずっと一緒なんだ。いつかのお楽しみにしていて欲しい」



 何も見えない世界で唯一見えていた彼女もとても美しくて輝いていた。だけど、全てが見えるようになった今、彼女は更に美しく輝きを増している。それを一番近くで見ることが出来る喜びで満ち溢れていた。








<殿下!!そっちはお尻です!!:完>



 番外編二話予定しています。引き続きお楽しみください!

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