第50話


 暫くして、輝く笑顔を浮かべたダミアンと不本意そうに眉を寄せるジェイミーが戻って来た。



「ジェイミーに婚約の許可を戴きました。これからは夫婦共々宜しくお願い致します。殿下。以前から話していた通り、セリーヌ様が王宮に来られてからもジェイミーをセリーヌ様の侍女として仕えさせていただけますか」



「婚約おめでとう。勿論だよ。ジェイミーのような有能な侍女がいてくれたら僕も安心だからね」



「自慢の妻ですから」



「ちょっと……まだ夫婦じゃないのだけど」



「すぐにそうなるよ。今すぐにでも届を提出しに行きたいくらいなのに」



 婚約の報告を聞き、セリーヌは満面の笑顔を浮かべるとジェイミーに思いっきり抱き着いた。



「ジェイミー、おめでとう!」



「……セリーヌ様。いけません。もうすぐ王子妃ともなるお方が侍女に抱き着くなど誰かに見られたら……」



「そうね。王子妃になったらもうジェイミーにこんな風には出来なくなってしまうわ。だから、今だけは許して頂戴」



「全く……」



 厳しい侍女ジェイミーもセリーヌのお願いにはめっぽう弱い。きっとこれからもセリーヌにお願いされてしまえば聞き入れてしまうだろう。されるがままになっていると耳元で嬉しそうな声が響いた。



「ジェイミーが想いを寄せていた相手と結ばれてとっても嬉しいの」



「な……っ」



「セリーヌ様、どういうことですか?詳しくお聞かせください」



「ダミアン!セリーヌ様から離れなさい!」



 詰め寄るダミアンをジェイミーが追い払う。言い合いが始まった二人からセリーヌがそっと離れるとルーカスが不思議そうに尋ねた。



「セリーヌ、さっきのは?」



 セリーヌは可笑しそうにくすくすと笑う。ジェイミーの想いに気付いたのは、セリーヌがルーカスの婚約者となってからだ。頑なに王宮に付いて来ない彼女がダミアンの話になると様子が可笑しくなる。それがあまりに可愛らしくてセリーヌはしょっちゅうダミアンの話をするようにしていたのだ。



「ふふ、乙女の秘密ですわ」




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