第40話
「……さま、セリーヌ様」
どの位の間、ぼんやりしていたのだろうか。ステファンが公爵邸に来た時には高かった日も、今はすっかり落ちている。ジェイミーの呼び掛けにハッと顔を上げると眉を寄せた彼女と目が合った。ソファーに腰掛けたまま長時間物思いに耽っていたせいで心配させてしまったようだ。
ステファンに想いを告げられた後、例の如くジェイミーはステファンを叩き出した。またしても不敬罪に問われないかヒヤヒヤしたセリーヌだったがステファンは文句一つ言わず城へ戻っていった。
ステファンを見送るとすぐセリーヌは父であるケクラン公爵に彼の言葉を伝えた。公爵は相当苦い顔をしていたが「お前の好きにして良い」と言った。ステファンと婚約していた頃から、王家に対して婚約解消を何度も求めていた公爵は、王家との繋がり等全く必要としていない。娘の意思を尊重したいと心から思っているのだ。このままルーカスの婚約者でいるのか、ステファンと婚約を結び直すのか、どちらも断るのか、どれを選んでも良いと告げられセリーヌは困惑した。
「一体どうしたら……」
混乱する事ばかりだ。
長く冷遇されていた婚約者と言えど、ステファンが告げた想いが嘘ではないことは流石に分かる。幼い頃は仲が良かったとはいえ、ずっと酷い言葉ばかり掛けてきた彼が実はセリーヌを好きだったなんて、どう飲み込めば良いのだろうか。
ルーカスのこともセリーヌの頭を悩ませている。
彼はセリーヌを愛していると言った。だが、それは目が見えていないときのルーカスだ。呪いが解け、目が見えるようになり、初めてセリーヌの容姿を目にしたルーカスはどう思ったのだろうか。そして、麗しい他の令嬢たちを目にしても、まだセリーヌを想ってくれるとはどうしても思えなかった。
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