第38話



 セリーヌとステファンが話をすると聞き、ジェイミーは明らかに嫌がる素振りを見せたが、セリーヌが人払いをすると「扉を開けたままにして、扉のすぐ傍におりますので!」と強い口調で言い、やっとのことで退室した。この態度だけでも不敬罪に当たるのではと、セリーヌは内心ヒヤヒヤしたがステファンが何も咎めなかったためほっと胸を撫で下ろした。




「セリーヌ……ええと、そうだな、その、何から話せばいいか……」


 ステファンは困ったように視線を彷徨わせ、言葉を選んでいる。彼のこんな仕草を見るのも随分久しぶりだった。



「ステファン様?」



「……まず謝罪をさせてほしい。セリーヌ。これまで酷い態度を取って済まなかった。君を傷付けることばかり言って、謝って許されることではないと分かっている。許してほしいとも言えない……だが、本当に悪かった」



「……っ」



「困らせるよな……分かっている。俺は莫迦だ、セリーヌにあんな酷い言葉ばかり言って。申し訳なかった」



 冷遇された婚約期間を思い出し、じわりと目に涙を浮かべるセリーヌにおろおろしながらステファンは必死で謝罪の言葉を重ねた。その様子が幼い頃の、まだ仲の良かった頃のステファンと重なり、これまでの蟠りがほんの少し緩んだ気がした。



「……ステファン様、いつもと、その、ご様子が違うと言うか」



「……っ、ああ。本当はこんな風にセリーヌと話したいと思っていた」



「ええと、一体どういうことでしょうか?」



 おどおどしていたステファンの視線が一転して熱いものに変わる。じっと見つめられ、セリーヌは視線を逸らすことが出来ないでいた。真剣な眼差しで彼は告げた。




「セリーヌ、愛している。幼い頃からずっと……今も変わらず愛している」



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