第34話



「毎日僕の所までセリーヌに来てもらっていて、それだけでも疲れるだろう?いつもつい引き留めてしまうし」



「そんなこと……!」



「それに一昨日は僕の呪いについて、なんて難しい話も聞かせてしまったし」



 ルーカスは自分がセリーヌに負担を掛けているせいでセリーヌが体調を崩していると考えている……セリーヌは大きく首を振り必死で否定した。



「体調不良はルーカス様のせいでは全くありません。寝不足が重なっただけで、私が健康管理を怠ったせいですわ」



「でも」



「それに呪いのこともお話しして下さって嬉しかったのです」



「……嬉しかった?」



「はい。もし先に聞いていなかったら……その、きっと不安になっていたと思うので」



 あの時ルーカスは呪いは解けなくても良いと言った。そして、彼がセリーヌに伝える言葉も、態度も、行動も、呪いとは関係ないことを説明してくれた。もしそれを聞いていなかったら、今触れている手さえ疑っていただろう。




「セリーヌ」



「ひゃっ」


 急にグイっと引き寄せられたと思ったら、ルーカスの胸の中に閉じ込められセリーヌは思わず声を上げた。抜け出そうと身を捩るがルーカスは力を緩めようとしない。ふわりと感じる彼の香りに鼓動が早くなっていく。




「お願い、少しだけこのままで」



「ルーカス様……」



「……きっと不安になっていた、ってことは僕のこと少しは意識してくれているってことだろう?」



 ルーカスの言葉にセリーヌはぱっと顔を赤らめた。そう、ルーカスを想うからこそ、ルーカスの想いを期待するからこそ、もしも呪いを解くために嘘の言葉を吐かれたら、気持ちの無い触れ合いをされたら、と想像するだけで不安になってしまう。間接的に伝えてしまった自分の想いに気付き、セリーヌは黙り込むしかなかった。耳元で「嬉しい」と囁かれ更に顔を熱くしながら、満たされていく心を知ってしまった。



 

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