第29話
「絶対にベッドから出てはいけませんからね」
目を吊り上げたジェイミーはきつくそう言うとセリーヌをベッドへ押し込めた。前日、様々なことが起こり、昨夜は殆ど寝付けなかったセリーヌは熱を出してしまっていた。その前の夜もクッキー作りで睡眠不足だったことも原因だろう。心配する必要はないとジェイミーにいくら言っても聞き入れては貰えなかった。
「……だけど、そろそろ王宮に行く準備をする時間だわ」
「今日は殿下とお会いするのもお休みです。体調を崩しているのですから」
「でも……」
その時、ルーカスから付けられている護衛数名が扉からひょっこりと顔を出した。心配そうにセリーヌを見つめている。セリーヌが大丈夫、と気持ちを込めて微笑むと彼らの表情も幾分か緩んだ。
「殿下への伝令を護衛達に頼んでいます……ほら、早く行きなさい」
虫でも払うかのように手を振り、ジェイミーは彼らを促した。……ジェイミーから冷たくされると心なしか嬉しそうにしている護衛がちらほらいたがセリーヌは頭を振り、気のせいだと思い込むことにした。
「ここのところ、忙しかったのですから……お願いですからゆっくり休んで下さい」
「ジェイミー……」
いつもは厳しく口煩いジェイミーが心配そうに眉を下げていると、セリーヌも我が儘は言えなくなってしまう。
「ジェイミーのお願いなら仕方ないわ。ちゃんと休むからあまり心配しないで」
セリーヌがそう言うとジェイミーは漸く表情を緩めた。
「はい。ゆっくりお休みになってくださいね」
ジェイミーは毛布を整えると一礼し退室した。彼女の背中を見送っているとすぐ睡魔が襲い、セリーヌはうとうとと眠りに落ちた。一方、セリーヌを寝かしつけたジェイミーは固い表情で足早にある場所へ向かっていた。
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