第25話



(((((あんなに素晴らしくて可愛いセリーヌ様が料理音痴だったなんて……!!)))))




 ジェイミーの言葉を聞いた護衛達は呆気に取られていた。





((むしろ、そこが推せる!!!!))




 一部の護衛達に少々歪んだ性癖を生んだことは置いておいて……ダミアンは護衛達に合図し退室させた。ルーカスとセリーヌをあと少し二人きりにさせてあげることが目的、ではない。ダミアンはジェイミーへ声を掛けた。




「ジェイミー、殿下とセリーヌ様がクッキーを食べる時間だけ待っては貰えないだろうか?」




「……分かりましたよ。お嬢様、食べたらすぐ帰りますよ。殿下……。」



 分かってるよな?と目の見えないルーカスへ言葉も無くオーラだけで伝えるジェイミー。そのメッセージは無事伝わり「……任せてくれ。」とルーカスは神妙に頷くのだった。





◇◇◇◇

 




「ジェイミー。」



「ちょっと近いです。」



 先程まで話していた部屋に戻ると、体育会系侍女は窮地に立たされていた。しまった、と思った時には遅かった。ダミアンによって壁際まで追い詰められていたのだ。




「……どうして、手紙の返事くれなかったの?」



「手紙?申し訳ないですが、実家にはずっと帰っていなかったので手紙なんて知りませんでした。」



「何で帰らなかったの?」



「……っ、忙しかったんです!!」



 縋るような瞳からジェイミーは必死で目を逸らした。



「三年間も?」



「ええ!ええ!そうですよ!お嬢様があのクソ拗らせ王子の婚約者でしたからね!どうしてもこちらも業務が増えてしまうんです!」



「王城には付いてこないのに?」



「……っ!私だって付いてきたかったですよ!付いてきてあのクソ拗らせ王子に一発……それなのに!貴方があまりにしつこいからでしょう!いい加減に……っ!」



「しつこいって言うってことは俺から手紙が送られていたこと、知っていたんだね?」



「……っ!!」



 ダミアンの呼吸が感じられる程、顔と顔の距離が近い。ダミアンがあと一歩攻めようとした時。






「ハァッ!!」



「いっ……!!」



 ジェイミーは思いっきり、ダミアンの足を踏み付けた。目に涙を浮かべるダミアンへ「もうお嬢様と帰宅しなくてはいけませんので。」と言い捨てさっさと退室する。



 これでダミアンの自分への執着も終わりだろうと、ジェイミーは息を吐いた。



 だが、待ってほしい。三年間、返事の無い相手へ手紙を送り続ける人間がたかだか一度足を踏まれたくらいで諦めるだろうか。むしろご褒美になっている可能性すらあるというのに。









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