第21話
ルーカスとダミアン、ジェイミーは、学生時代の同級生だ。
ダミアンは幼い頃からルーカスの侍従候補としてルーカスの傍にいた。不幸にも目が見えない王子、ルーカスは見目麗しく、性格も温厚で優しく、どの分野でも優秀であることからルーカスにアプローチする女子生徒はかなり多かった。アプローチするほど積極性の無い女子生徒でも、ルーカスを目にすれば、ルーカスが一言声を掛ければ、誰しも目がハートになっていた。
目がハートにならない女子生徒は同級生でたった一人。そう、ジェイミーだ。
「ルーカス殿下!ダミアン様!」
「ジェイミー嬢?」
「どうしたかな?」
穏やかに尋ねるルーカスにジェイミーは食って掛かった。
「どうもこうもありませんよ!令嬢たちが殿下にお会いしようと、私たちの教室前の廊下はしょっちゅう人混みで溢れているんですよ。授業の妨げになっています!」
「ジェイミー嬢……、それは殿下のせいではないだろう。」
「いいえ。殿下のせいですわ。殿下。お優しいことは良いことですが、令嬢たちに優しすぎるのです!そのせいで勘違いした令嬢が大量発生しているのです!」
「え、ええ?そうだったの?」
ルーカスが驚きの表情を見せるが、ダミアンはジェイミーが言ったことに前から気付いていた。気付いていたがどう進言すべきか迷い、結局何も出来ずにいた。ジェイミーはダミアンをキッと睨みつけた。
「ダミアン様もダミアン様ですわ!殿下の為を思うなら、殿下が適切ではない行動をした際は諫めるべきです。」
「う……。」
「ジェイミー嬢。申し訳ない。ダミアンも、私を傷つけないように言葉を選んでいたんだろう?悩ませて悪かった。だが、ジェイミー嬢の言う通りだ。特に私は目が見えないからね、気付かないことが人より多いだろう。これからは何でも言って欲しい……私が傷つくことであっても、だ。」
「畏まりました。」
「では、あの群がる令嬢たちを蹴散らしましょ!さぁ、行きますよ!」
危険な言葉を吐き、腕まくりをするジェイミーを見て、二人は慌てた。
「ジェ、ジェイミー嬢。乱暴なことは駄目だ。」
「ちゃんと解決するから!少し時間をくれ!」
「えぇ……はぁ、仕方ありませんね。」
がっかりしてトボトボ歩き、図書館へ向かうジェイミーをルーカスとダミアンは見送った。
「二人目だな。」
「殿下?」
自分へ過度な期待をしたり、媚び諂うことをしない令嬢は彼女で二人目だ。ルーカスは一人目の女の子を思い出し、胸が痛くなった。
その後、ルーカスとダミアンはジェイミーと過ごすことが増えた……というより、二人がジェイミーに懐いていると言った方が近いかもしれない。ジェイミーは、卒業するまで王子のルーカスにも、侯爵令息のダミアンにも媚びることは無かった。
同級生の中でも特に優秀な三人。卒業後、ダミアンは当初の予定通りルーカスの侍従として、ジェイミーは公爵家の侍女としてそれぞれ勤めることになった。
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