第20話

 


 その頃、隣の部屋ではダミアンによって追い出された護衛達がコソコソと会話を始めた。




「なぁ、毎日婚約者の尻触っといて気持ち伝えてないってヤバくないか?」




「ああ。ヤバい。ヤバすぎる。」




「俺も婚約者の尻触りてー!!」




「相手が王族だから、セリーヌ様もあまり強くは言えなかったのでは?」




「いやいや!毎日抓ってたじゃねーか!その度に不敬にならないかヒヤヒヤさせられたぜ。」




「セリーヌ様の抓り、相当痛そうだよな……。」




「あれは殿下の策略じゃないかと俺は思ってる。」




「策略ぅ?」




「ほら、女から痛めつけられて喜ぶ性癖あるだろ?殿下もあれなんだよ!」




「マジかよ……。」




「目的は尻じゃ無かったのかよ?!ヤベー!」




「王族ともなると性癖も我々の遥か先を行くんだな。」




「俺もセリーヌ様に抓られてぇな~。」




「お前も殿下と同じ性癖かよ!王族じゃん!」




「はぁ、早く結婚して嫁さんの尻触りてぇよ。」




「ばーか!嫁さんが尻触らせてくれる訳ねぇだろ!」




「え!結婚したら尻触り放題じゃないの?!俺、四六時中尻触りたいから婚活してるんだけど!」




「嫁さんの尻なんて触ったらボコボコにされるっつーの!」




「っていうか、お前も尻フェチかよ!殿下と同じじゃん!」




「王族二人目だな!」





 最初はヒソヒソと小声で話していた護衛達も話が盛り上がるにつれ、ガハガハと笑い始めた。ダミアンは彼らを横目で見ながら大きく溜め息をついた。



 ルーカスに付いている護衛達は腕は立つが荒くれ者ばかりだ。他の場所で働いていて問題を起こした者の中から、腕が立つ者を見つけるとルーカスが拾ってくるのだ。なので護衛達はルーカスに恩を感じ、仕事は懸命にするのだがマナーや礼儀に欠けている。




 いつもならルーカスに対して不敬と思われる言動を注意するダミアンだが、今日は流石にその気にならなかった。今回ばかりはルーカスが悪い。ダミアンが荒くれ者達をぼんやり眺めていると、ガチャリとドアが開いた。




 ドアの前には小柄な可愛らしい女性が立っている。早歩きでダミアンの前まで来ると「ダミアン様!」と声を荒げた。




「ジェイミー?」




「お嬢様のお尻って何の話ですか?!」



 叫ぶジェイミーの迫力に、荒くれ者達でさえ震え上がり静まり返った。




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