第17話



 セリーヌはハッとした。自分は何て愚かな真似をしたのだろう、と。セリーヌはルーカスを心配させまいと火傷を隠し、あまつさえこの時ばかりはルーカスの目が見えなくて助かったとすら思ったのだ。だが反対の立場だったら、もしセリーヌが目が見えなかったら、目の前にいるルーカスが怪我をしていても気付かないなんてきっと悲しく、辛く、寂しくなるだろう。後から怪我を知ったら、気付けなかった自分を責めるだろう。セリーヌが取った行動は、信頼関係を壊し兼ねないものだ。



「ルーカス、さま……ごめんなさい。私、私……。」



 とんでもないことをしてしまった。セリーヌが顔を青くして謝罪の言葉を必死で探しているとルーカスは首を振り微笑んだ。



「セリーヌが僕を心配させないように火傷を隠したって、分かっているから大丈夫だよ。」



「でも……。」



「うん。次からは教えてくれたら嬉しいな。どんな小さな傷でも、小さな変化でも。」



「ちゃんとお伝えしますわ。絶対、お伝えします。」



「それで十分だよ。」



 ルーカスはセリーヌの手の包帯へ口づけを落とした後、先程よりも強い力でセリーヌを抱き締めた。先程までは抱き寄せられてもされるがままだったセリーヌだが、勇気を出してルーカスの背中に手を添えようと手を伸ばした。だが。





「殿下!!そっちはお尻です!!」



「あらら、ごめんごめん。」



「何がごめんごめん、ですか!!今のは絶対わざとです!!」



 セリーヌがぷんぷんと怒っているのを見てルーカスは可笑しそうにケラケラと笑った。セリーヌがこれ以上落ち込まないようにわざと怒らせているルーカスのことを想うとセリーヌは嬉しくて、だけど苦しくて、悲しくて、零れ落ちそうな涙を必死で堪えた。







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