第18話
「僕の方もセリーヌに言わないといけないことがあるんだ。」
セリーヌの気持ちが落ち着き、出された紅茶に口を付けているとルーカスが話し始めた。
「何でしょうか。」
「僕の目が見えないのは、前国王陛下が魔女の不興を買ったせいということは知っているよね?」
「はい。」
前国王陛下、つまりルーカスの祖父は野心家で領土拡大に心血を注ぎ、魔女の地に手を出してしまった。そのせいで、当時生まれたばかりのルーカスが呪いを受けたことは全国民の知るところだ。
「前国王陛下はね、初孫の僕が呪いを受けたことに今でも憂慮されていてね。」
僕は全く気にしていないんだけどね、とルーカスは苦笑した。目が見えなくなった原因を気にしないなんて、有り得るのだろうか。そんなセリーヌの疑問を察したルーカスは頷き、言葉を続けた。
「物心ついた時にはもう目が見えなかったからね。僕にはこれが普通なんだよ。それに周りの人にも恵まれているし前国王陛下は僕にとって大事なお祖父様だ。何より……。」
不思議そうに次の言葉を待つセリーヌへルーカスは優しく微笑んだ。
「何より今はセリーヌが隣にいてくれるからね。僕は国で一番幸せだよ。」
「な……っ!」
言葉を失ったセリーヌに構わずルーカスはにこにことセリーヌの手に自身の手を重ねた。
「だから僕は目が見えなくても何も困らない。だけどお祖父様はそうではないんだ。」
ルーカスが後ろに控えていたダミアンへ合図すると、ダミアンは報告書をテーブルへ置いた。
「これは……。」
「お祖父様が他国をあちこち駆け回って調査した、呪いの解き方だよ。」
「の、呪いが解けるのですか?!」
「うーん……それは分からないんだ。ダミアン。」
ルーカスがダミアンを促すと、ダミアンは一礼し説明を始めた。
「諸外国でも魔女の不興を買い、呪いを受けることはあったようです。呪いを受けたまま生涯を終えた方が殆どですが、少数の方は呪いの解除に成功したようです。その方々は、国も、職業も、性別も、年齢もバラバラのようですが、呪いの解除に関して一点共通しているものがあります。」
セリーヌが報告書に目を落とす。そこに書かれた文字を見て、セリーヌは目を見開いた。
『呪いを解除するためには、愛する者と気持ちが通じ合うこと。』
セリーヌの複雑な表情は見えない筈なのに、ルーカスはじっとセリーヌを見つめていた。
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