第6話 ちょっと本気で口説いてみた


俺とフィリアは王宮へ到着した。

目の前にはあの偉そうな女が座っている。

フィリアが膝を付いた。



『陛下、この者は・・・いや、このお方は間違いなく救世主です』



救世主?

ほう、勇者ではなく救世主という設定か。


フィリアは今回の騒動を収束させたのが俺だと事細かに説明している。


城の中の兵が少ない、街の復興に尽力しているのだろう。

偉そうな陛下は信じられないという顔をあからさまにしながら、フィリアの説明を聞いている。


暇なので俺は周囲いる色々な種族を改めて見ていた。

そういえば、何故女しかいないんだ。



『お前、アキと言ったか?』



陛下に呼ばれた。




『そのソティラスの紋章をどこで手に入れた?』



この右手のあざのことを言っているのか?

こんなもん、生まれた時からあった。

紋章とかしらねーよ。




『それは、ミリア様のものだ!』




ばあちゃんのもの?

もしかして、ばあちゃんって異世界人だったのか?



俺は、ばあちゃんの孫だと説明した。

陛下もフィリアも、俄かに信じがたいといった顔をしている。


それもそのはず、この世界では、ばぁちゃんがこの世界を去ってから10年しか経過していないとのことだ。



俺の世界と、この異世界とでは時間のズレがあるのだろう。


こいつらの話によると、ばあちゃんはこの異世界の救世主であり、世界に混沌が訪れる度に世界救う役割だったらしい。


ただ、たった10年という短い周期でまた混沌が訪れるのは大昔の記録を見ても前例がないと言っている。


混沌とはざっくりだが、他国が攻めてきたり、魔物が増えたり、気象変動が起こったりすることを指すようだ。



そういえば、ばあちゃんは俺の手のあざをみて、このあざはお守りだよと言っていたことを思い出した。


難しい内容じゃないな。

つまり俺は、ばあちゃんの・・・・いや、救世主の後継者だ。



ばあちゃんは美しく、聡明で、優しく、聖女のようだったと。

身内のことを褒められるとちょっと嬉しい。



ちょっと、ほっこり笑顔になって気が緩んだ時、天窓が割れ3人の黒服の男たちが飛び降りてきた。



ドッキリじゃない。

これは奇襲だろう。


狙いは陛下か。



『陛下!』


フィリアが声をあげ、腰にあった短剣を抜いた。


男たちはフィリア含め、周囲を見向きもせず、一直線に陛下に向かっていく。



出番だ。

俺は腕を組んだまま陛下の前に立ちふさがり、男たちの攻撃を受けた。

因みに腕を組んだまま、瞬間移動的なことをやってみたかった。


拳と剣と・・・・、そして・・・おおお大剣だ。

バスターソードぉおぉぉお。

ちょっと欲しいと思ったが、俺の身体に当たった瞬間に砕け散った。



俺は、セイっと掛け声と一緒に拳の風圧で男たちを吹っ飛ばした。

マンガのように、男たちは壁にめり込んだ。

筋トレは裏切らない。


どうだ?と自信満々の顔で陛下の方へ振り返った。


が、もう一人いた。

陛下の背後だ。


俺はとっさに陛下を抱きかかえ、背後にいた1人を蹴り飛ばし、フィリアがいる広間の中央の方へ飛んだ。



お姫様だっこで救出を現実でやった。

これは好感度あがるだろう。



「大丈夫か?陛下」




怖かったのか、返事がない。



「おい、陛下。大丈夫かって聞いてんだよ!」



俯いていた陛下が俺の方を見上げた。



『あ、アイナスと呼んでくださいませ。アキ様』




きたぁぁぁぁぁ。

ありがとう暗殺者達よ。

このイベントで大逆転だ。


頬を染めるアイナス。

ここでたたみかけよう。



「アイナス、俺はお前の剣となり、さらに盾となろう」




アイナスは恋する乙女の顔をしている。

恋愛ゲームと全く一緒だ。

今なら何を言っても許される。




「だからな、俺の首なんて取らないでくれ」




『はい・・・・・・』



おっしゃあああ。

言質とったあああ。



これで、この国で俺は追われることはない。



『あ、あの・・・アキ様』



まだ、何かあるのか?アイナス。




『わ、ワタクシと・・・結婚してくださいませ』




へ?



ばあちゃん、俺、求婚されちゃったよ。



第6話 完

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