第5話 ちょっと本気で救ってみた


街の出入り口に到着した。

後ろに見える街並みが炎で赤く染まっている。

大胆なことするな。

犯人はどいつだ。


フィリアがまだはぁはぁと息をきらしている。

息が落ち着き、街を見たフィリアが悲しそうにその光景を見ている。


ふむ、ならここは正義の味方が救ってやろう。


街のはずれから、炎の魔法攻撃をしているやつが1人。

その前には50人くらいの騎士が立っている。


なんだ相手は人間か。


俺達に気付いたのか、目の前に炎の球が飛んできた。


まてよ?

魔法っていうのは、生命エネルギーから作るんだよな?

と、いうことは具現化された魔法自体も同じエネルギーじゃないのか?


俺は右手を前に出し、炎の球を吸収した。

仮説は正しかった。


フィリアがまた口をあけてこちらを見ている。

じゃぁ、ちょっくら行ってくるとフィリアに伝え、俺は街をこんなふうにした軍勢の前まで走った。


指揮官らしき魔導士ぽい男が何者だ!と叫んでくる。

答える義理はない。


躊躇なく、50人程の騎士が俺に向かってきた。

だが、俺には剣は効かない。

立っているだけで、騎士たちの剣が折れていく。


なら、ここで一気に倒してやろう。


俺は騎士たちの生命エネルギーを吸収し、魔力へ返還した。

それなりの魔力が溜まったのを感じた。


50人程の騎士達はバタバタと倒れていく。

そりゃそうだろう。

こいつらの生命エネルギーすべてを吸収してやった。


フィリアが追いかけてきて、俺の後ろに立って驚いている。

50人の騎士を倒したことに驚いているんだろう。



『き、貴様っ!何者なんだ』



魔導士が定番のセリフを言ってくれた。

なんだか気持ちいいぞ。



『クソっ、すべて燃やし尽くしてやる!お前らの街のように。貴様も!そこの娘も!』



そこの娘?

俺はわなわなと震えた。


なんて、嬉しいセリフを言ってくれるんだこいつは。

返答はこれしかない。



「・・・フィリアのことか・・・・・、フィリアのことかーーーー!!!!」



このセリフを現実で言えるなんて幸せすぎる。



魔導士が詠唱を始めた。

だが、甘い。

俺は無詠唱だ。


空に掌をかかげ、さっき吸収した生命エネルギーで火の球を作った。

大体直径10メートルくらいか。


魔導士が口を開けている。

詠唱が止まったようだ。


だけど俺は気づいた。

掌をかかげると、元〇玉みたいだ。


俺の好みはこっちの方だ。


俺は掌から、人差し指に変えた。



これから花火をあげてやるぜ。



人差し指をくいっと魔導士の方へ向けた。



「死の炎球デスファイア




炎の球が魔導士向けて飛んでいく。


夜なのに、昼間のように明るく爆炎が広がり、魔導士は消し飛んだ。


フィリアの方を見ると目を輝かせながら俺を見ていた。



「おい、フィリア」



『は、はいっぃぃ』



「これでも俺の首を取るのか?」




フィリアがもじもじしてる。

かわいい。



『あなた様のお名前を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?』



もじもじした態度から一転、キリっとした顔なったでフィリアが尋ねてきた。


そういえば名乗ってなかったな。

タツアキって本名はこの世界に向かない気がする。



「俺はだ」



ふむ、これでいいだろう。



『アキ様、王宮へお越しください』



フィリアが片膝を付き、かしこまっている。


フィリアに行くぞと伝え、王宮へ向かった。



ばあちゃん、俺、この世界でも人助けできてるぞ。





第5話 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る