第7話 翼と風と藍と白

コンコン、、、


いつもは朝日が俺を起こすのに、今日は何かを叩く音で目が覚める。何の音だ。鳥が窓でも叩いているのか?


「ぉーぃ、開けてー」


!?

何でユキナが家のベランダにいるんだ。俺が起きたことに気が付いて、嬉しそうにこっちにひらひらと手を振っている。ベランダにいるのも意味が分からないが、まずどうして俺の家を知っているんだ。


「やっと窓開けてくれた。おはよう」

「……おはようございます。あの、なんでここに?」

「依頼だって。急ぎらしいから呼んで来いってマスターが」

「そうだったんすね、すぐ用意します」

「というかさ、あのマスターって何も話さないの?筆談だったんだけど。彼の名前って何だか分かる?私元居た所にもマスター居るからさ、マスターって呼ぶとなんか違和感あるんだ」

「…着替えたいんで、いったん外出ててくれます?」

「あはぁ、ごめんごめん」

なんだそのリアクション。ニヤニヤしながらこっち見ないで欲しい。


「すぐ行くんで屋上で待っててください」

「はーい」


朝から依頼に呼ばれるのは久々だな。企業のお偉いさんやらがボディーガードだったり、奇襲を受け、応援が必要。みたいなことがしばしばある。今回もその類だろう。


着替えを済まし、ブレスレット型になっているウィングスーツを装備する。

かつて映画なんかで未来の技術として登場していたナノテクノロジーが近年現実化され、先進技術として宇宙システムなどに取り入れられている。

このスーツもアルバーさんのツテでナノテクノロジーが搭載されている物を作って貰った。このブレスレットが脳内チップと連携して、着脱・操作を可能にしている。




部屋を出て屋上に上がると白羽しらはのスカーフが、マントのようになっているユキナの姿があった。よく見るとトレンチコートの周りに纏うように白羽が覆い被さっている。


「さあ、行こうか少年」

「はい」


燕のような藍色の翼を広げる少年と、

揺らめく純白の羽に包まれた女性が、

大空へと飛び立って行った。

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