お嬢様達の血戦
「焼却☆処分!!!」
「キレてても結局その喋り方は崩さないのね!?」
円火は刀身とは不釣り合いなほどに伸びた炎を、上から下へと真っ直ぐ振り下ろした。
(…刃血鬼ならただの火は平気だけど、あれは刃術。全然死ねるわね、まともに喰らえば)
眩奈は延焼の可能性を危惧して大袈裟に回避し、円火にまた話しかけた。
「…少なくともあんたみたいなのは、傷があったほうが逆に綺麗に見えると思うけど?」
「何が言いたいの?」
「元がブスだから、更にマイナスになればオーバーフローして逆に最大値に近づくわ」
眩奈は爆炎の中に薪を投げ込んだ。
「まーこの世界はゲームじゃないし?仮にそうならもっと上手くキャラメイクするわよね」
眩奈はガソリンをぶちまけた。
実のところ、円火は中々に美人の部類である。顔にコンプレックスがあるわけでもない。しかしそれでも怨野や眩奈にブスと言われ続けるのは何故か。
「…電車で会った奴といい、貴方といい…」
ひとえに。
「目ェ付いてんのかしら?この私が不細工などと…」
そう、容姿は関係無く。
「決めたわ。貴方に大火傷を負わせて、それこそ見るに堪えない容姿にしてあげる。私より美しい女など、この世にはいらないから」
円火の横暴な性格を見抜いた怨野や眩奈は、その圧倒的な自信に傷を付けるべく、彼女に対し言葉の刃を向けているのだった。
早い話が、彼女は他人から一瞬で察知されるほどの「クソ短気」なのである。
「過度な自尊心は身を滅ぼすわよ?教えてあげなくちゃね」
「プラシーボ効果ってあるでしょう?時には思い込みも重要なのよ」
まさに今、血戦の火蓋が切って落とされたのだ。
(啖呵を切ったわけだけど)
眩奈は2本の血刃を、片方は上に、片方は地面と平行に投げた。
(一回、火力がどんなものか試してみなくちゃね)
目の紋傷からまた引き抜き、投擲準備。
「…あなた、本当に私を倒す気があるの?」
円火は己の血刃を、眩奈の物に向ける。
「どうせこれも罠でしょう?いいわ、掛かってあげる」
直後、円火の血刃から光が溢れ――
「☆
一直線上に、炎の極太ビームが走り、眩奈の血刃を跡形もなく完全に消滅させた。空気を伝う熱波は凄まじく、照射時間はほんの僅かながら、周囲の気温が数度、上昇した。
(冬とはいえ、何で屋外なのに気温が上がるほど熱が出せるわけ?ってか、血刃を破壊する程度で、こんな大技じみたことする!?)
すぐさま円火は眩奈に血刃を向け、発射の準備をした。しかし、眩奈は見逃さない。
(疲弊している?じゃあさっきのは威圧、ハッタリの類かしら?普通なら炎をばら撒く範囲攻撃でもいいのに、わざわざあの火力を出す必要はない。あと考えられるのは――)
無数の血刃を宙に放り投げ、一瞬の光に紛れて円火の視界から消える。そして横に回り込み縦に五つ、更に投げつけて再び姿を消した。
(円火は自分の能力…というより、強さそのものに絶対の自信がある。近距離でやりあって炎を出されると危ないし、牽制に牽制を重ねて耐久戦に持ち込んだほうが良いわね)
追加で広範囲から数本を投擲、円火はそれを両手に構えた血刃で捌く。
「鬱陶しいわね…チマチマやるくらいなら」
構えた血刃を地面に突き刺し、
「▷
「その名前ならハート付けなさいよ!」
決戦に似つかわしく無いツッコミを入れたその時だった。
彼女らの周囲一帯が、炎で包まれた。いや、正確に言うならば…仕切られた。
大通りをシャッターのような炎が区切っている。ビルからも炎が吹き出しており、これによって眩奈の逃げ場は完全に塞がれたのだ。
「へえ、コロシアムってそういうことね」
第2ラウンド、スタート。
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