災禍の炎

 [死生朱雀]衝突の数時間前。

「突破沸血。さて、どこにいるのかしらぁ?」

 眩奈は、凄まじい熱を放ちながら歩いていた。

「どーせ気付いてるんでしょ?見えてるわよ、私には」

 目の前に、円火が降りてきた。

「まぁ、威勢の良いこと。その余裕綽々な口振り、焼却処分したくなっちゃう☆」

「語尾が気持ち悪いわね…まーいいわ。私の希望はたったひとつなんだから」

 眩奈は円火に血刃を投擲した。

眩ませる光アメティットルミノス!」

 眩奈の血刃から、眩い光が放出された。

「っ!?」

 円火は目を押さえて後退りする。

「要するに閃光弾ってわけ」

 円火が視界を取り戻したと同時に、目に飛び込んでくる眩奈の姿。

「危ないわねッ!」

 円火は取り出した血刃で応戦する。

「危ない?戦闘なんだから当たり前でしょう?」

 眩奈の初撃は袈裟斬り。受け流されたと判断し、血刃を回転させて直ぐに逆手持ちに切り替えてもう一発。順手と逆手を入れ替えつつ縦、横、斜めと連撃を繰り返す眩奈に対して、円火はそれを受け流しつつ応戦していた。

 刃同士のぶつかる音が、夜の市街地に谺する。

「…なら、危な〜い危な〜い「火」を使っても、文句はないわね?」

「全っ然文句言うわよ?フェアな勝負なんて最初から望んじゃいないし」

「理不尽ね。あなたみたいな燃えるゴミは捨てておかないと☆」

「あんたがぶりっ子ぶっても気持ち悪いだけよ。それこそゴミ箱の中でふんぞり返ってなさいよ。自分で燃えるゴミ、処分が楽そうでいいわね」

 物静かな雰囲気こそあるが、双方は一歩とも譲らず舌戦しつつ刃を交えていた。

 突如、眩奈が目を瞑った。

(…へえ、自分の光に耐性があるわけじゃないのね)

 再び、血刃から光。タイミングよく円火も目を瞑る。

「見えてんのよ!」

「見せてんのよ?」

 円火が目を開いたその一瞬、眩奈は間髪入れずにもう一度血刃を発光させた。

「ッ!?」

 眩奈は隙を突いて、円火の顔面に傷を入れた。

「…え?」

 円火が固まる。

「貴方…今…何をしたの?」

「ただ攻撃しただけでしょう?刃血鬼に今更何言っ…て」

 眩奈から汗が吹き出した。ただの発汗による汗と、もう一つ。

「女の顔に傷を入れるなんてねえ…ネェ!」


 先程までとは明らかに違う、圧倒的な気迫に対しての冷や汗だった。

(身体が本能的に警告を発してる。取るべき最善は逃走一択だけど、私のメンツがね…放っておくと被害も拡大するし)

 微笑を浮かべる眩奈を睨みつけ、血涙を流しながら円火は

「覚悟しなさい。多少の傷は最早無いように思えるほどの灼熱地獄に案内してあげるわ」

「…エスコート、お願いするわね」

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