幕間:怨まれる者達

「なぁ、なんとか言えよ」

 男は沈黙したままだ。

「このままじゃ俺は、お前を裁かなきゃ行けなくなる。お前は俺を怨まねえだろ?力にだってなりゃしねえんだ」

 答えない。

「分かってる。あの時、お前は何かが。凄まじい伸び代を感じたわけだ。だが、何も通行人を皆殺しにする必要は無かったんじゃねえか?」

「…キ、キァ」

 沈黙を貫いていた彼に、異変が起こった。

「…おい?」

 無駄のない滑らかな動きで、怨野の腹部へと正確に血刃を突き出す。

「何のつもりだ?温厚に話し合うつもりだったんだがな」

「ヒヒッ」

「…違う、こいつは…いや、は…!」

 怨野は臨戦態勢に入った。

「さっさと目ェ覚ましてくれたほうが有り難いんだけどな…下手すりゃ殺す可能性が出てきちまう」

 襲いかかってきた無数の影を一瞬で切り裂き、怨野は再び男に話しかけた。

「解除条件は何だ?痛みか?」

 男を弱めの力で蹴り、髪を掴んで揺らす。

「起きろ!何があった!」

 男は、白目を剥いたまま、気絶していた。

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