[死生朱雀]:2

〈狙撃部隊の撤退を確認!〉

「分かりました。爆発に注意しつつ進撃して下さい」

 本陣で指揮を執る血走。

(…何か変だ。撤退が早すぎる)

 やたら防御が甘い点。出てくる気配のない[爆賛會]。そして、狂戦士の如く突撃を繰り返す、統率もへったくれもない[白虎十字軍]。

 思案していた血走の目は、飛来したを捉え、見逃さなかった。

(…まずい、間に合わない)

 集団の中から吹き飛んできた物…瀕死の、[白虎十字軍]の一員である。

(ここから血刃を射出する?いや、発動のタイミングを誤れば、爆発までの時間が狭まるだけ…ああもう、最悪すぎるんだけど…)

 ―――

「捕縛血糸!」

 積み上がっていく、拘束された少年達。

「死体は敵陣に投げ返せなんて言われてましたけど」

「必要ねえよな?お前の拘束のおかげで、誰も死なずに済んでんだからよ」

 収川が豪快に笑う。

「いえ、収川さんの的確なサポートのおかげです」

「へへっ、何もしてねえけどな。後輩にそう言われると歯がゆいぜ」

 笑い合っていた、その時。

〈上に警戒して撤退!!今すぐ!!!〉

 血走の、悲鳴とも取れる指示が耳を貫いた。

「何が……」

 警戒、と聴き、上を向く系糸。視線の先には、空を舞う[白虎十字軍]のメンバーがいた。

「…まさか、いや、でも…」

 それはないだろう、と。

 死亡時の保険として、爆発の刃術を使うならまだ理解できる。血も涙もない[爆賛會]ならやりかねない。

 だが。

使なんて…さぁ…」

〈逃げてくださいッッ!!!〉

「行くぞ系糸!」

「は、はい!」

 直後、さらなる問題が発生した。

「なんで…」

「付いてきてんだよ!?」

 目をギラつかせながら、[白虎十字軍]が追撃を始めたのだ。

「…収川さん」

「あ?なんだ?」

 切羽詰まる状況の中、系糸が怯える声で話しだした。

「…相手の狙いは、これなんじゃ」

「どういう意味だ?」

「…僕達が逃げ、それを彼らが追撃する。接触するそのタイミングで瀕死のあの人が爆発したら――」

「…おいおい」

 収川は冷や汗をかく。

「それはつまり…っつー、外道すぎる作戦を考えてるって事か?」

「だから…この場合、最善でやる手は…」

「奴らの足止めか?だが、瀕死のあいつが完全に死に至るまで、そう時間が余ってるとは思えねえ」

「…だから―――」

 系糸が何かを言おうとしたタイミングで。

 空中を、爆炎が包みこんだ。

「特殊――」

 収川が特殊刃技の発動を試みるが、銀弾で足を撃ち抜かれる。

「…ッ…狙撃部隊は全滅したはずだろ?」

 系糸は即座に収川を縛り上げ、後方へと投げ飛ばした。

「赤亡?何して…」

「僕よりあなたが生き残るべきです!死ぬってんじゃないですし…」

 言い終わった後、系糸は爆風に吹き飛ばされた。

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