任務:弱者を嬲る弱者を裁け
鬼神府。系糸は、紅亡に促されて成務票を取りに来ていた。
「何なんだよ紅亡さん…話が終わった直後に、「お前2件しか受けてねえし適当に受けておけ」とかさ」
確かに任務は2件しか受けていない。しかし、「しなかった」と「できなかった」は違う。
「結構戦ってるのに、流石に酷いよ」
現状、系糸は拉致されたり、乱入されたり、襲撃に対処したりで、任務以外での交戦回数がやたらと多いのだ。その回数、10日足らずで8人。
「深紅亡って最高ランクなんでしょ?斬断とか、僕が戦っていい相手じゃないし…はぁ」
愚痴りながら成務票を探す系糸は、難易度が低そうな物を選び、剥ぎ取った。
「じゃ、受注しますか」
系糸は、成務票に血刃を突き刺した。
―――
受注前、系糸は幸辛からある情報を教わっていた。
紋傷を叩くと、受注した情報や自分の階級が分かる、というものである。
「情報が頭に流れ込んだりでもするのかな」
独り言をつぶやきながら、系糸は言われた通り、自身の紋傷――左手の甲を引っ叩いた。
「痛っ。やっぱ嘘だと思うんだけど…あれ?」
系糸は違和感に気づいた。
「血が…抜けてって」
紋傷から血が溢れ出し、浮遊し始めたのだ。
「うわ、すっご…」
やがてそれは文字を描き出した。成務票に記された氏名、能力名。系糸がロクに確認していなかった所属盟団、罪状まで事細かに述べられている。
「
刃型。彼はまだ教わっていないが、要するに刃術の種類である。自己を強化する
「能力名:
読み上げるにつれ、顔がどんどん青ざめていく系糸。もう一度紋傷を叩いて血を引っ込め、天を仰いだ。
「瞬間移動とかふざけてるでしょ。条件によっては拘束が意味を成さなくなるし」
一度深呼吸をし、向き直った直後だった。
(近い…気配がするし、いつの間にか距離は10mに減ってる。前方にはいないようだし…)
「…なるほどね!」
振り向きざま、系糸は血刃を投げた。
(やっぱ当たらないか…どうせ瞬間移動で――)
系糸の思考は、背中を切られたことによって遮断された。
「ッ…ぐ!」
「いやー、驚いたぜ。接近に気付いてたなんてよ」
謎の声が系糸を挑発する。
「…瞬沢、だね」
「驚いた、名前まで把握してんのか?」
声の主――瞬沢は、もう一度血刃を振るった。
「…その通りだよ…覚悟決める前に、そっちから来てくれるなんてね」
「チッ、罪狩りか…いいぜ、お前を撃退すれば、一度罪はチャラになる。一人で挑んだことを後悔させてやるよ…!」
手強いと判断し身構える系糸。対峙する瞬沢は酷く挑発的だが、油断はしていないように見える。
系糸は血刃を真上に投げ、糸を繋いで振り回す。
「糸…か?良くわからねえ刃術だな」
「こちらとしても分からない方が好都合だよ」
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