血走の容態

 6畳間、欺偽宅の中央に敷かれたタオルの上。全身が真っ赤に染まり、各所に裂傷、左腕を欠損している血走が横たわっていた。

「原因と経緯を教えろ。モノによっちゃ治せねえ場合もある」

 欺偽が問う。

「…恐らく数時間前の爆発だ。発動条件が余程分かりづらかったのか」

「根拠は?まさか罪狩りの皇帝とも呼ばれるあんたが、勘なんて言い出すわけじゃあるまいしな?」

 ケヒッ、と気色の悪い笑みを浮かべながら、欺偽は煽る。

「…その顔はやめてもらおうか」

「やめないと言ったら?」

 少しの沈黙。一触即発の雰囲気の後、欺偽が口を開く。

「賢明な判断だな」

「…同じ盟団の者が任務を受注した場合、一分間だけ同様の成務票が他者に通達される。既に別の任務を行っている者は別だがな」

「聞いたことがねえな」

「それはお前が無所属だからだろう…話を続けるぞ。今回も同様に、私は彼女が任務を受注した事を確認している。私はそこから担当範囲、普段の任務の所要時間も含めて割り出した。あの爆発が原因である可能性は極めて高い」

「へーえ、[赤連]の団長ともあろうお方が出した結論が、どこの馬の骨とも知れねえ罪競いの爆発に巻き込まれて瀕死だ?随分と自分の部下を軽んじてるようで」

「確かに案ずるほど彼女は弱くない。おそらくは不意打ちか、初見殺しに近い能力でやられたのだろう」

「卑怯で片付けられるよう、自分を納得させてるだけとも取れるけどな…で、こいつをどうすりゃいいんだ?」

「どうするも何も、治せるのだろう?」

 淡々と言ってのける心做に、欺偽はため息をついた。

「はぁ…いいか?俺の刃術は傷を先送りする“先送りの痛みアムネレアドゥレリィ”。傷に相当する量だけ寿命を縮めるんだ、分かるか?」

「ああ、知っている」

「かすり傷じゃ経っても数秒程度だが、この傷じゃどんだけ縮むか分かったもんじゃない。俺に寿命を見る能力なんてねーし、これは賭けになっちまうんだよ」

「問題ない。今後、何が待ち受けているかも分からないのだ。怨野が恐れている何かが来襲する可能性だって少なくない」

「戦力ってわけか。非情なもんだな…分かった」

 起き上がり、欺偽は応じた。

「治してやる。ただ、完治はさせねえ」

「寿命の話か?ありがたい話だ、それでやってくれ」

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